強引な節税

昨年のパナマ文書に続き、パラダイス文書と呼ばれる書類が大量に漏えいされた。この書類で明らかにされたのは、大企業や大金持ちがタックスヘイブン(租税回避地)を利用し、税金逃れを図っていたことである。この中には、アップルや、イギリスのエリザベス女王、フォーミュラ1のドライバー、ルイス・ハミルトンなども含まれていた。いずれも不法なものではないとされるが、既存の制度を巧妙に利用したもので、本来支払われるべき税金が支払われていない。

メイ首相は、税金逃れに対するこれまでの対策と成果を語り、きちんと税が支払われねばならないと主張したが、それ以上の策には踏み込まなかった。

一方、野党労働党のコービン党首は、英国産業連盟(CBI:日本の経団連に相当する)での演説で、これらの税が支払われなければ、国民保健サービス(NHS)などの公共サービスが影響を受け、財政赤字が出れば、その穴埋めをするのは一般の国民だと批判した。

昨年のパナマ文書は、アイスランド首相の辞任につながった。また、イギリスのキャメロン首相が、父親が租税回避地に設立したトラストファンドの持ち分を売り、利益を得ていたことがわかり、キャメロン首相自身が政治家として終わりだと思ったと伝えられる。政治家には、直接関与することがあれば、大きなリスクとなりうる。

今回の漏えいは、有権者がこのような文書の漏えいに慣れてしまっており、パナマ文書ほどのインパクトはないのではないかという見方がある。恐らくそれは正しいだろう。公共放送BBCが、パラダイス文書を扱った番組パノラマを放映したが、そのインパクトははるかに小さいように思われた。

産業振興や投資促進などが複雑に絡み合い、税金の仕組みは非常に複雑なものになっている。イギリスには、王室属領などの租税回避地の存在で、その金融セクターの発展に役立ててきた歴史がある。それらを巧妙に操作し、強引な節税に走る向きは、そう簡単に減りそうにない。