トランプショック

アメリカのトランプ大統領が訪英し、首相別邸前での記者会見が終わったところだ。訪英前、イギリスのタブロイド紙サン紙とのインタビュー(録音付き)で、トランプ大統領は、メイ首相にEUとの交渉をいかにするかについてアドバイスしたが、メイ首相は聞かなかった、メイ首相のソフトなBrexit案ではイギリスとアメリカとの自由貿易はできそうにない、アメリカがイギリスと話をするのではなく、EUと話をしなければならないからだ、と主張した。メイ首相はアメリカとの自由貿易合意締結に大きな期待を抱いており、しかもトランプ大統領との強い関係を印象付ければ、自分の率いる保守党の強硬離脱派を抑えられるという期待があった。これらの期待を打ち消すような発言をしていたために首相別邸前の記者会見には多くの注目が集まったが、トランプ大統領は当り障りのない発言に終始した。それでもメイ首相はトランプ大統領の訪英で大きなダメージを受けたといえる。

なお、サン紙とのインタビューで特に注目されるのは、ボリス・ジョンソン前外相が素晴らしい首相となるだろうと発言した点だ。ジョンソンは先週金曜日の首相別邸でのBrexit閣議合意に反対して外相を辞任した人物である。この発言は、メイ首相に将来はなく、その後任にはジョンソンが就くという見方をしていることをうかがわせる。

記者会見で、アメリカのジャーナリストが最初にトランプ大統領に聞いたのは、日曜日のプーチン露大統領との会談についてだった。明らかにアメリカの注目はイギリスとの関係ではなく、ロシアとの関係である。サン紙のジャーナリストが、公共放送BBCの看板番組Todayでトランプ大統領はBrexitについて非常に詳しく知っていると発言し、母親がスコットランド出身で、スコットランドにゴルフコースを持つトランプ大統領の発言はいい加減なものではないように思われる。トランプ大統領の最大の関心がロシア、それにNATOにある時に、過大な期待を抱いたメイ首相には大きなショックだっただろう。

先の見えないイギリス政局

メイ首相が7月6日に首相別邸で開いた内閣の会議で、内閣のブレクシットへの方針が決まったと思いきや、7月8日、9日とブレクシット大臣と外務大臣が辞任した。メイの方針はEUに譲歩しすぎで、これでは本当のブレクシットはできないと主張したのである。

メイの率いる保守党は、EUからの強硬離脱を目指す勢力と、ソフトな離脱を図る勢力とが対峙してきたが、強硬離脱派が今回のメイの方針に強く反発しており、保守党がこの問題でまとまることはほとんど不可能な状態になってきている。

ただし、メイを保守党党首・首相の座から引き下ろすことはそう簡単ではない。強硬離脱派は既に80名ほどの勢力があり、保守党の党首信任投票に必要な48名は超えている。しかし、信任投票を行うことはできても、保守党の316人の下院議員の中でメイの不信任が勝ち取れるかどうかは不透明だ。もし、不信任とならなければ、それから12ヶ月は再び不信任投票を行うことができない。その上、もし不信任となり、党首が交代することとなっても、党首選には3か月程度かかり、今年の秋(遅くても11月と言われるが)までの期限に新しい首相による交渉が間に合うかどうか疑問がある。

メイは、首相別邸で合意された内容を白書としてまとめ、今週中に発表する予定だ。そこで問題になるのが、EU側がそれをきちんと受け止めてさらに交渉するかという点と、最大野党の労働党がどう対応するかである。

EU側は、白書を見てからという態度だ。メイ保守党政権が生き延びれるかどうか、保守党内でどの程度の支持が得られるか、または労働党がどのような対応をするかなどを見極めた上で反応が返ってくることとなるだろう。EUがその白書を交渉の基礎とするのに消極的だと根本的に状況が異なってくる。

上記でも触れたが、野党労働党の対応が重要だ。今のままでは、全650議席の下院(議席に就いていないシンフェイン党の議席も含む)で、保守党の強硬離脱派の支持を受けずに過半数の賛成を得るには、メイ首相は労働党のかなり大きな支持が必要だ。しかし、労働党も総選挙の可能性を見極めながら動かざるを得ず、最初から方針を決めて対応することは難しい。

結局、当面はメイ政権のまま、どの当事者も今後の政局の行方を見ながら判断していかざるをえない状況にあると言える。白書が発表された後の来週あたりに状況がもう少しはっきりしてくるだろう。

保守党党首選の可能性?

6月のEUサミットで、ブレクシットの概要が決まるはずだった。ところが、このサミットでは移民の扱いが中心課題となり、ブレクシットはその他の話題の一つに過ぎなかった。その理由の一つには、保守党の中だけではなく、メイ政権の中でもブレクシットに関する考え方がまとまっていないことがある。それをまとめるのは、7月6日(金)に首相別邸で予定されている閣僚の集まりとされている。2016年6月のEU国民投票から2年たち、来年3月にはEUを離脱するというのに、未だに政府の立場が決まっておらず、追い詰められた状態になっていること自体、危機的な状態である。

ところが、問題はそれだけにとどまらない。有力閣僚のゴブ環境相が、首相別邸の会議で提出される予定の文書が気にいらず、破り捨てたと報道された。この文書は、ブレクシットに関する内閣小委員会の中のワーキンググループの報告書で、内閣の中の意見の相違をまとめるための重要なものである。すなわち、7月6日の会議の、少なくとも基礎になる文書にケチがついたことで、この会議そのものの意義が疑われる事態になってきた。

ゴブ環境相は、2016年のEU国民投票で離脱派キャンペーンの有力者の一人だった。ゴブ環境相の動きは、メイ下ろしの一環である可能性がある。強硬離脱派の中の他の有力リーダーであるジェイコブ・リース=モグは「原理主義的」であり、ジョンソン外相は、その軽率な言動に問題がある。もしメイが退くこととなった場合、リース=モグかジョンソンが後任の保守党党首、首相となって、EU側と交渉する立場となることには、保守党内からも、EU側からも理解されることが難しいだろう。その一方、ゴブの能力を高く評価する声があり、しかもプラグマティックな人物だ。保守党内をまとめ、EUに対峙するには、恐らく、これらの人物の中では最もふさわしいだろう。

そのようなことを反映しているのだろう、ブックメーカーの賭けでは、ゴブは次期保守党党首候補の筆頭となっている。ゴブに首相となる野心があることはよく知られており、現在の火中の栗を拾う覚悟はあるように思われる。むしろ今を逃せば、2016年の党首選でミソをつけたゴブのチャンスはなくなるかもしれない。7月6日の会議がどうなるかで、保守党の党首が交代する可能性が出てくる。

ブレクシットの行方

EU離脱法案をついに上下両院が承認した。メイ政権が崩壊する可能性があったが、保守党内のソフトな離脱を求める勢力の反乱を妥協で何とか抑えきった。しかし、メイ首相が主張するようなスムーズな離脱ができると見る人は多くない。メイ首相がEU離脱法案の問題を乗り切ったのは、メイ政権が極度に弱体化しており、政権が崩壊して総選挙や党首選挙などの混乱を避けたいなどという保守党下院議員の身内の事情による。メイ首相が強硬離脱派とソフトな離脱派のはざまで苦しんでいる構図が変わったわけではない。メイ首相の弱い立場を利用しようとする防衛相らをはじめとする勢力もある

なお、世論調査では保守党が労働党を数ポイントリードしているが、保守党の世論調査でのポジションは、2017年総選挙前の世論調査より大幅に悪化している。

また、世論調査でメイ首相が、ブレクシットの交渉をうまくしていると見ている人は少なく、3分の2の有権者はメイの交渉はまずいと見ている。このような状態にしたメイ首相の責任が問われるのは確かだ。メイ首相は、セキュリティなどの面からEU側が折れてくると考えていた節があるが、欧州版GPSガリレオ衛星システムや欧州逮捕状の問題などでイギリスがEU枠外におかれることがはっきりした。今やメイ首相の状況は切羽詰まっており、メイ首相は、EU側の助けを求めなければならないような状況におかれていると言える。

この中、強硬離脱派は、メイ首相に、EUと合意しないまま離脱する準備も進めるよう要求した。EUやアイルランドも合意なしのイギリス離脱の準備を進めておりエアバスやBMWなどの大手企業も合意なしの場合の警告を発している。しかし、メイ首相の性格を考えると、合意なしでEU離脱をするとは考えにくく、そのためメイ首相の苦悩はさらに深まることが予想される。

必死なメイ首相

メイ首相は、自分の政権を守るために国民の最も関心の高い政治課題、国民保健サービス(NHS)に飛びついた。国民は誰でもNHSで無料の診療、手術、投薬、入院などの医療が受けられ、中流階級を含め、多くの国民がその恩恵を受けている。しかしながら、NHSは、緊縮財政の中、お金が不足しており、人手不足でその運営目標が達成できない例がほとんどだが、これまで冬季のNHSの最も忙しい時期でも追加のお金を渋っていたメイ首相が、突然、気前のいいことを言い始め、毎年大きく増やし、2023年には実質200億ポンド(3兆円)あまりのお金を追加すると約束したのである。しかもその財源の一部は、EU離脱のため支払う必要のなくなる負担金だと言うのである。

こういう財政問題が問われる際、多くの人がコメントを求める先は、政治的に中立の立場で権威のある財政問題研究所(IFS)である。IFSのトップは、EU離脱で浮く負担金は、離脱の際の清算金や国内でEU補助金がなくなるための埋め合わせなどで既に数年間の分はなくなっているとコメントした。そのため、大幅な増税が予想されている。これは昨年の総選挙での公約に反する可能性がある。その財政的な裏付けは、今秋の予算で発表されるが、メイ首相は、ハモンド財相に任せているとする。

一方、メイ首相は先週EU離脱法案の最初の危機を乗り切ったが、それが爆発する可能性がある。EU離脱法案は、イギリスがEUを離脱した後、効力のなくなるEU法に取り替わって、それをイギリス国内法とするための手続き法案である。この法案が下院の審議を終えた後、上院で、政府の意思に反して修正が加えられた。その修正は、再び下院で覆されたが、議会が「意味のある」判断をするという点で、上院が、前回よりもさらに大きな差で再び修正した。それが再び水曜日に下院で採決される。

前回は、メイ首相が、上院の修正に賛成する可能性の高かった、保守党内のソフト離脱派と交渉して反乱を防いだが、その後、メイ首相が上院に提出した新修正案はソフト離脱派に裏切りとみなされており、今回は反乱につながる可能性がある。NHSへのお金投入の話は、この反乱を防ぐ狙いもあると見られるが、その効果がどこまであるか注目される。いずれにしても、メイ首相は、これまでの方針を歪めても生き残りに必死にならざるを得ない状況になっている。

メイ首相と保守党のドラマ

メイ首相のドラマはまだまだ続く。EU離脱法案をめぐる保守党内の争いは終わる気配が見えない。その中心にあるのはメイ首相だ。6月12日と13日、下院は、EU離脱法案の上院で修正された条項についての採決を行った。結果によっては、メイ首相のEU離脱交渉と政権の将来に大きな影響を与えると思われたが、いずれもメイ首相側の勝利に終わった。

保守党下院議員には、EUからの強硬離脱派60人余りと、ソフトな離脱を目指す議員/EU残留派の議員たち20人足らずが対峙している。そしてメイ首相は、その両方のバランスを取ろうとしている。メイ首相には、いずれの支持も失えない。

そこでメイ首相は、ソフトな離脱を目指す議員たちに、EUとの合意ができたかどうかにかかわらず、議会に最終的にどうするかを決めさせると約束した。少なくとも、これらの議員たちは、メイ首相がそう約束したと思った。

ところが、上院に再び戻されたEU離脱法案への政府提出の修正案では、その約束は消え、代わりにメイ首相がかつて主張していたような「受け入れるか受け入れないか」の二者択一に戻っていた。すなわち、政府がEUと合意ができれば、議会がそれをそのまま受け入れるか、もしくはその合意に納得しなければ、そのまま合意なしで離脱するかの選択肢のような形である。政府がEUとの合意をしないと決めても議会が政府にEUとの交渉の席に戻るよう強制できない。

これは国際条約の場合にあてはまることである。しかし、交渉期限が決まっており、イギリスの経済をはじめとする国際関係に大きな影響をもたらせるEU離脱交渉でそれがよいのかどうか議論があろう。もちろん、下院でメイ政権の合意や立場が受け入れられなければ、メイ政権は不信任され、政権が崩壊するだろう。

いずれにしても、保守党の強硬離脱派は、EUとの関係について議会に決めさせる力を与えることには反対だ。上院ではもちろん、下院でも全体としてソフトな離脱を求める勢力の方が強硬離脱派より多い。そのため、信用できないが、今のところ自分たちが影響力を行使できるメイ首相に自分たちが受け入れられる合意、もしくはそのような合意ができなければ合意なしの離脱をさせた方がよいと考えている。

一方、保守党のソフトな離脱派は、最終的には、議会がどのようにするかを決めるべきであるという考えを崩していない。イギリスは、結局、議会主権の国である。

強硬離脱派とソフトな離脱派の対立は、そう簡単には解決できない。保守党のドラマ、メイ首相のドラマはまだ続く。

メイ首相の二枚舌

イギリスの下院で、上院から返ってきたEU離脱法案の討議と採決が行われた(その結果)。上院ではメイ政権の意思に反して15の修正が行われたが、下院での採決を巡り、保守党議員の中に、メイ政権の指示に背いて、修正に賛成する動きがあるのではないかと見られていた。当初政府側は6月12日にすべてを処理するつもりでいたが、議員らの反発を受けて2日間に伸ばした。結局、メイ首相の妥協策でその動きは抑えられた(6月12日、13日)が、その後始末を巡って様々な憶測が強まっている。

メイ首相の出した妥協策とは?まず、ソフトな離脱を目指す議員たちに議会が最後にどのような離脱をするかを決められるようにすると約束したと言われる。一方、強硬離脱派には、そのような約束はしていないとしたと伝えられる。すなわち、相反する妥協策で、保守党の中の強硬派とソフトな離脱派を宥めたようだ。

これは二枚舌といえる。タブロイドのサン紙もそれを第一面で指摘した。今回メイ首相が行ったのは、危機を先送りしただけで、早晩、さらなる危機にさらされると見られている

メイ首相がこのような策に打って出たのには、単なる引き延ばし以外の理由があるように思われる。例えば、6月末のEUサミットで何らかの妥協がなされる可能性を期待しているのかもしれない。もしくは7月には夏季の休会が控えており、9月に再開されるまで、次の手を準備する時間があると考えているのかもしれない。そして何らかの方法で10月末ごろまでに何とかEU側と合意をすることを考えているのかもしれない。さらに2007年から8年にかけての世界信用危機のような事態の発生、または、サッチャー政権でのフォークランド紛争のような外部要因で、EU離脱問題自体が、全く異なる視点で対応する必要が出てくる可能性が出てくるかもしれないと考えているのかもしれない。

ただ、メイ政権は弱体化しており、今回のような綱渡りを繰り返せる状況にはない。その一方、もし、メイ政権がこの下院での投票で敗れていれば、保守党の党首交代の機運が盛り上がる可能性があった。そしてこの夏に党首選を行うことは可能だったろうが、その機会は消えたように思われる。一方、来年3月29日のEU離脱を控え、イギリス議会と欧州議会に離脱条約などを審議、承認させる時間の必要があることを考えると、今秋に党首選を行うことも難しい。メイ首相は、これらのロジスティックの問題を背景に首相に居座る思惑なのだろうが、果たしてその通りにいくか?ボリス・ジョンソン外相が指摘したようなメルトダウンの可能性もあろう。

イギリスの上院の価値

イギリスは、EU離脱交渉を実施しながら、離脱に必要な法整備を行っている。イギリスは2019年3月29日に離脱する。政府は、議会にEU離脱法案を提出し、下院を通過した後、上院に回された。上院では、政府の意思に反して、15の修正が加えられた。議会が最終的な離脱合意に賛成かどうか決める権限があるとか、EUの単一市場にアクセスできるよう欧州経済地域(EEA)に入るべきだなどの修正である。

下院では、メイ保守党政権が閣外協力を受けている民主統一党(北アイルランドの政党)の10議席を加えて過半数を占めるが、上院は、保守党は少数派で、ソフトな離脱を求める議員の多い上院では、その意のままにはならない。そしてこれらの修正に賛成する保守党の下院議員も10人余りいると見られている。メイ政権は、これらの修正をある程度受け入れ、さらに妥協をする準備があるが、下院でメイ首相の選択肢を大きく狭める可能性のある上院の修正が通る可能性がある。

このEU離脱法案は、下院での審議の後、上院に再び送られ、もし下院と上院の間の妥協ができなければ、お互いを行き来する、いわゆるピンポンという状況になるかもしれない。ソフトな離脱を求める人たちは、上院の価値を感じているだろう。

一方、公選でない上院が、2016年の国民投票の結果を無視しているとか、公選の下院の意思に反する立場を取っているという議論がある。それでは、国民は、この上院をどう思っているのだろうか。

実は国民は、上院にあまり関心がない。多くの読者を持つタブロイド紙のデイリーメイルを含め、何紙もが上院の動きを強く批判してきているが、その効果は限定的なようだ。世論調査では、6割の人は上院のことをよく知らない。今回の上院の修正については、離脱を支持した有権者の半分以上が上院の行動は不当だと考えるが、残留を支持した有権者で不当だと考えるのは4分の1ほどだ。全体的には、半分以上の人が、上院の公選化(部分的もしくは全体)や廃止を支持しているが、上院に怒りを感じているわけではない。労働党は、上院の公選化を打ち出したが、それに国民の多くが強く賛成するという状況ではないようだ。

なお、上院議員のほとんどは、元政治家やそれぞれの分野で特に貢献度が高いなどの理由で任命された一代議員である。全議員の一割余りを世襲議員と聖公会の僧職にある人たちが占めている。上院議員には年俸はなく、登院すれば305ポンド(4万5千円)の日当が出ることになっている。

2010年に発足したキャメロン政権では、保守党内の反対が強く、上院の改革ができなかった。もし、労働党が次の総選挙のマニフェストで上院の公選化を約束し、労働党が過半数を獲得すれば、上院が改革されるかもしれないが、それ以外の場合には上院の改革はかなり難しいように思われる。その大きな理由は、上院の改革には上院の賛成が必要とされるためである。

なぜアロン・バンクスが注目されているのか?

大金持ちでイギリス独立党(UKIP)の支援者だったアロン・バンクスに焦点があたっている。なぜこの人物が問題なのだろうか?

それは、2016年のイギリスがEUを離脱すべきかどうかの国民投票に関する問題についてバンクスの関与である。バンクスがEU離脱キャンペーンに違法な形で資金支援したのではないかという点と、そのお金がどこから出たか、自分のお金か、EUの混乱と弱体化を狙うロシアからのものか、もしくはロシアの協力を得て稼いだお金から出たのかの点である。

2016年のEU国民投票の結果は、離脱賛成51.9%対、離脱反対48.1%の僅差で、離脱賛成の結果となった。その結果、国民投票を実施した保守党のキャメロン首相は首相を辞任し、後任のメイ首相が来年3月のイギリスのEU離脱に向けて、現在EU側と交渉を行っている。

バンクスは、保険分野で成功し、1億ポンド(150億円)以上の資産があると見られている。その妻はロシア出身であり、バンクスがロシアを訪れること自体、何ら不思議なことではない。しかし、2016年のEU国民投票の前後、バンクスがロシアの外交官らをはじめ、ロシア関係者に何度もあっていることがわかった

1.違法な資金援助

バンクスは、UKIPのファラージュ元党首らの離脱キャンペーン団体「離脱EU(Leave. EU)」を設けたが、それ以外の離脱キャンペーン各種団体を含め、その資金援助総額は900万ポンド(13億5千万円)にも及ぶと見られている。「離脱EU」の支出報告には、既に選挙委員会から違反があったとして、7万ポンド(1千万円)の罰金の支払いを命じられている。これにバンクスらは法廷で争う構えだ。選挙委員会は、この団体のチーフエグゼクティブを警察に告発し、警察が調査を進めている。

2.お金の出どころの問題

バンクスが自らの資金を自ら出していれば、そのこと自体に問題はないが、ロシアからの資金が流れ込んだり、ロシアから利便の提供を受けたりしていれば、問題である。

バンクスは、下院のデジタル・文化・メディア・スポーツ委員会から「偽ニュース」や個人データの悪用について証人として出席するよう何度も求められていた。これは、バンクスのケンブリッジアナリティカというデータ分析会社との関係を中心にし、アメリカ大統領選挙やここでのEU国民投票への影響について調査するものである。バンクスは、ファラージュUKIP元党首と一緒にトランプ大統領とも会っている。バンクスは委員会の召喚を無視する構えだった。しかし、内務委員会への出席などを求める声も出てきており、新しい状況下で出席を承諾した。

なお、バンクスへの調査がどのようなことになっても、それで国民投票の結果が無効になるわけではない。イギリスは、EUを来年2019年3月29日に離脱することに変わりはない。

主なブレクシット日程

2018年

  • 6月12日 イギリス下院で、上院で修正されたEU離脱法案審議・採決
    保守党の下院議員がこの採決でどのような投票をするかが注目される
  • 6 月28-9日 EUサミット
    このサミットまでにイギリスがEUとの貿易関係とアイルランドの国境問題についての方策を提案することになっていた。しかし、待ち望まれている政府のブレクシット白書は、このサミットの後で発表されることとなった。
  • 10月17-8日 EUサミット
    本来、このサミットで、イギリスのEU離脱条約案と将来の貿易関係についての政治宣言をまとめ上げ、イギリス議会、そして欧州議会の審議・批准に回すはずだった。しかし、現在の状況では、6月サミットで片づけられておくべきものをこのサミットで処理せざるを得ない状況だ。
  • 10月下旬
    政府は、イギリス議会にEU離脱条約案の投票を約束している。賛成多数の場合、移行期間法案も採決される。そして欧州議会に送られる。
  • 11月・12月
    10月サミットでイギリス側とEU側が合意に達しなかった場合、臨時サミットが開かれる可能性がある。12月13-4日に開催予定の EUサミットがほとんど最後の機会となる。

2019年                                                

もし、イギリス議会と欧州議会が離脱条約を承認し、批准すれば、

  • 3月21-2日 EUサミット
    イギリスがメンバーとして出席する最後のEUサミット
  • 3月29日イギリス時間の午後11時 イギリスが正式にEU離脱

2020年

もし、予定通りにいけば、

  • 12月31日 移行期間が終了。