リフォーム党の行方

リフォーム党の動向が注目されている。リフォーム党は、下院議員5人を擁する小政党であるが、403人(2025年6月13日現在)の下院議員の所属する政権政党労働党を世論調査の支持率で上回り、5月初めから継続してトップに立っている。

リフォーム党は、もともと英国独立党(UKIP)を基にした右翼政党である。UKIPそしてその後のブレクジット党は、英国がEUに加入していた時代に欧州議会議員選挙(異なる選挙制度)で多くの議席を獲得していた。それが2020年の英国のEU離脱後、リフォーム党となる。この変遷は、現党首ナイジェル・ファラージュの下で行われた。ファラージュは、有権者によく知られた人物である。

2024年総選挙後、リフォーム党の支持率が伸び、次期総選挙(2029年までの5年の任期中に行われる)で、ファラージュ首相の可能性を憶測する向きも出てきた。しかしながら、リフォーム党はファラージュ党首のワンマン政党の傾向が強く、政党の体制がきちんと構築されていない。この問題を克服することが当面の大きな課題である。

リフォーム党の会長だったジア・ユースフ(Zia Yusuf)はイスラム教徒であるが、女性イスラム教徒のブルカ着用の問題で、党会長職を辞職した。しかし、わずか2日後に地方自治体の無駄を省く仕事(トランプ米政権のDogeをモデルにしたもの)に復帰した(BBCラジオToday 6月9日 2:10から約15分間)。

この仕事は、5月の地方選挙で多くの地方議会議員の当選者を出したリフォーム党にとって極めて重要なものである。ほとんどのリフォーム党地方議員は、地方議員の経験がなく、移民問題など国政レベルの問題を訴えて立候補した。地方自治の問題を十分理解しないままである。議会の過半数を獲得した地方自治体は10に上る。なお、英国では、一部の直接選挙の市長を除き、地方議会で多数を握る政党が地方政府を運営する。すなわち各議会の政党のリーダーが首長の役割を果たす。5月の地方選挙では、また、地方議会の過半数を制しなかったもののリフォーム党が最大政党となった地方自治体もある。しかし、他の政党が右翼のリフォーム党と協力することに消極的だ。

新興政治勢力にとって、地方議会議員を増やすことは、下院議員選挙で勝つために重要なことである。しかし、数が増えても、リフォーム党の地方政府の運営がお粗末では、有権者は離れていく。すなわち、地方政府の運営が可能な体制をリフォーム党の本部が確立していく必要ある。

ファラージュ党首とユースフとの間でどのような話があったのかは不明だが、リフォーム党運営のプロ化に大きな貢献をしたとされるユースフの党への復帰は、人材の不足するリフォーム党にとっては、必要なことであったように思われる。

スコットランドで労働党が勝利

スコットランドで、SNP(スコットランド国民党)の現職議員の死去を受け、2025年6月5日にスコットランド議会補欠選挙が行われた。そこで労働党が予想外の勝利を収めた

全国の世論調査によると、現在、労働党は支持率でリフォーム党に後れを取っている。労働党は2024年7月の前回総選挙で地滑り的大勝利を収め、下院650議席のうち、400議席あまりを獲得した。しかし、今や労働党の人気は低迷しており、現在、右翼のリフォーム党が労働党に10%近くの差をつけてリードしている。スコットランドでは、SNPは前回の総選挙で労働党に多くの議席を奪われたが、現在はSNPが労働党を約10%リードしている。

今回の補欠選挙の事前予想では、SNPが勝利するとされ、労働党はリフォーム党に次ぐ3位と予想されていた。しかし、選挙での得票率は労働党が31.6%、SNPが29%、リフォーム党が26%だった。保守党はわずか6%の得票率だった。なお、2021年スコットランド議会選挙では、得票率は、SNPが46%、労働党が33.6%、保守党が17.5%だった。リフォーム党はこの選挙区に候補者を立てなかった。

労働党は、2025年5月の、下院補欠選挙の敗北(6票差でリフォーム党候補者に敗北)、それにイングランド地方議会選挙での大敗により、苦境に立たされていた。なお、保守党は労働党よりもかなり多くの議席を失っている。その一方、リフォーム党は多くの議席を獲得し、多くの地方自治体を運営することとなった。

リフォーム党の人気はスコットランドでも高まっている。英国選挙の権威カーティス教授によると、スコットランドでは保守党支持者の4人に1人、労働党支持者の6人に1人以上がリフォーム党を支持している。さらに、ITVの政治部長によるとSNP支持者もリフォーム党に投票している。

一方、昨日2025年6月5日、リフォーム党チェアマンのZia Yusufが辞任したと報じられた。38歳の起業家で、メリルリンチやゴールドマン・サックスで銀行員として勤務していた人物である。コンシェルジュ会社を設立し、2億3000万ポンド(約450億円)で売却した。後にリフォーム党に20万ポンド(約3900万円)を寄付する。2024年7月、リフォーム党のチェアマンに就任し、ボランティアとして無報酬で1日18時間働いていると言われていた。リフォーム党をプロフェッショナル化した人物として見られていた。次期総選挙でリフォーム党から立候補するとされていたが、党内の対立により辞任したとみられる。スリランカ系イスラム教徒の両親を持つ。リフォーム党新下院議員のブルカ着用禁止の訴えに触発された議論が引き金になったと言われる。ユスフの辞任はリフォーム党にとって大きな損失といえる。

来年のスコットランド議会選挙、そして今後の英国政治に何が起きるか注目される。