キア・スターマー首相らが支援者から服やメガネなどの寄付を受けていた問題(ウォードローブゲート)は、必ずしもルール違反ではないようだが、生活苦にあえぐ国民が少なからずいる中、批判を受けるのは理解できる。スターマー首相らは今後、服や衣装の寄付は受けないと発表したが、スターマー首相の評価は大きく下落した。
1997年の総選挙で地滑り的大勝利を収め、保守党に代わって政権についた労働党のトニー・ブレア元首相も政治倫理に関する問題で失敗している。F1のバーニー・エクレストンから労働党が1997年5月の総選挙の前に献金を受けていた。そして、総選挙後、政府が、スポーツ関係へのタバコの広告を大きく制限する中、自動車レースのF1への広告はその対象から外した。当時タバコ会社は、F1の広告主の主力であった。この問題では、もしF1でタバコ広告が禁止されると、英国に拠点を置いていたF1チームが他の国へ移るとの「脅迫」があったとされる。結局、労働党は献金100万ポンド(1.9億円)を返金した。この件をめぐって、ブレアは、自分の政治生命は終わったと思った時もあったようだ。この問題に関して、当時、BBCのジョン・ハンフリースがインタビューでブレアを問い詰めたが、ブレアはこの危機は乗り越えた。
ブレアが1997年に首相となった時、個人的な人気が非常に高かった。スターマー首相は、それほど個人的な人気があるわけではなく、少しでもこのような話題が持ち上がれば、その影響が大きく出る。ウォードローブゲートは、スターマー首相個人の倫理観の反映であるといえる。スターマー首相は、自分はルールを守ってここまで譲歩しているのに「いったい何が悪いのだ?」という思いがあると思われる。しかし、政治には印象が大切な面があり、今後スターマー首相は、それに留意していかざるを得ないだろう。