保守党のマニフェスト

6月11日お昼過ぎ、スナク首相が保守党の総選挙マニフェストを発表した。スナク首相は、このマニフェスト発表で、世論調査の政党支持率で20%余りの差(BBC:6月9日現在)をつけられている野党第一党の労働党との差を縮められることを期待している。しかしながら、その期待は裏切られることとなりそうだ。

保守党総選挙マニフェストのジャーナリストらの評価は、まず、マニフェスト発表後のジャーナリストらの質疑応答に出た。特に印象的だったのは、Sky ニュースの政治部長ベス・リグビーからの質問だ。「世論調査によると、有権者は、保守党の方が労働党よりも税金を上げると見ている。失敗したのではないですか?」

これは痛烈な質問である。スナク首相は、このマニフェストの発表でも、これまで何十回も繰り返してきた「労働党は税金を2000ポンド(40万円)上げる」というマントラを繰り返した。そして、「それを妨げるため、この選挙の最後まで頑張る」とした。しかし、有権者は、保守党の言動を信用していないようだ。

マニフェストでいくら減税の話を持ち出しても、有権者がスナク首相と保守党を信用していないのでは効果はない。

スナク首相のBBCインタビュー

BBC番組パノラマで、7党の党首インタビューが行われている。最初の党首はスナク首相で、6月10日夜の30分番組に出演した。インタビューするのは、元BBC政治部長で、BBCラジオの看板番組Todayのプレゼンターであるニック・ロビンソンである。

このインタビューはスナク首相にとってかなり厳しいものになることが予想された。一方、スナク首相の1年半の施政、さらに首相になる前の財相時代を含めた4年間、その上、過去14年間の保守党政権下の施政などかなり多くの課題に、30分の時間内で、触れる必要があることから、ロビンソンにとっても厳しいものであった。結局、両者ともに不満の残るインタビューになったと思われる。

スナク首相は、あらかじめ作った筋書き通りにスムーズに対応したように思われる。特に、まともに答えるのが難しい質問には答えず、話を逸らせる、若しくはあらかじめ作った答えを繰り返し話すなど、一般に「政治家の答え」と言われるものを効果的に使った。ただし、このような返答はまともに答えるよりもダメージを減らすのに効果があるかもしれないが、総選挙中に、首相の発言への信ぴょう性を増す、もしくは首相への信頼を増すことにはつながらない。

その一つの例は、6月4日の、労働党党首との2大政党党首討論テレビ番組で、スナク首相が、労働党が総選挙に勝てば「一勤労者家庭当たり2000ポンド(40万円)増税」となると、1時間の番組で10回ほども主張した件だ。ロビンソンが、スナクは、4年間の予想を合わせて積み上げて作った数字を1年のものに聞こえるように言った、財務省の公務員が計算してその数字を作ったと、財務省事務次官の警告に反して主張したと質問したが、それらには答えず、スナクは自分の主張の中身を繰り返し説明したのにとどまった。

また選挙の争点の一つ、不法移民の問題では、スナクが、不法移民が英国に来るのを抑えるため、アフリカのルワンダに送る政策は、飛行機も予約しており、もう少しで実施でき、不法移民数の減少が可能になるとしたが、ロビンソンが、もしそうならば、どうしてもう少し待たず、総選挙を実施することにしたのか、という質問には答えなかった。

スナク首相は、我々は、将来の英国の話をしているのだと、現在達成できていない問題は、「計画」を持つ保守党が解決できると繰り返し主張した。ロビンソンが過去14年間の保守党政権下で繰り返し達成できなかったものを、今さら有権者が信じるかと質問しても、きちんと答えなかった。

いずれにしても、保守党が「一勤労者家庭当たり2000ポンド(40万円)増税」の主張を継続し、「計画」を持つ保守党の方が「計画のない」労働党よりも政権にふさわしいとの議論を続けるのは間違いない。