アメリカのトランプ大統領が訪英し、首相別邸前での記者会見が終わったところだ。訪英前、イギリスのタブロイド紙サン紙とのインタビュー(録音付き)で、トランプ大統領は、メイ首相にEUとの交渉をいかにするかについてアドバイスしたが、メイ首相は聞かなかった、メイ首相のソフトなBrexit案ではイギリスとアメリカとの自由貿易はできそうにない、アメリカがイギリスと話をするのではなく、EUと話をしなければならないからだ、と主張した。メイ首相はアメリカとの自由貿易合意締結に大きな期待を抱いており、しかもトランプ大統領との強い関係を印象付ければ、自分の率いる保守党の強硬離脱派を抑えられるという期待があった。これらの期待を打ち消すような発言をしていたために首相別邸前の記者会見には多くの注目が集まったが、トランプ大統領は当り障りのない発言に終始した。それでもメイ首相はトランプ大統領の訪英で大きなダメージを受けたといえる。
なお、サン紙とのインタビューで特に注目されるのは、ボリス・ジョンソン前外相が素晴らしい首相となるだろうと発言した点だ。ジョンソンは先週金曜日の首相別邸でのBrexit閣議合意に反対して外相を辞任した人物である。この発言は、メイ首相に将来はなく、その後任にはジョンソンが就くという見方をしていることをうかがわせる。
記者会見で、アメリカのジャーナリストが最初にトランプ大統領に聞いたのは、日曜日のプーチン露大統領との会談についてだった。明らかにアメリカの注目はイギリスとの関係ではなく、ロシアとの関係である。サン紙のジャーナリストが、公共放送BBCの看板番組Todayでトランプ大統領はBrexitについて非常に詳しく知っていると発言し、母親がスコットランド出身で、スコットランドにゴルフコースを持つトランプ大統領の発言はいい加減なものではないように思われる。トランプ大統領の最大の関心がロシア、それにNATOにある時に、過大な期待を抱いたメイ首相には大きなショックだっただろう。