右派のリフォーム党(Reform UK)の支持率が上昇し、政党支持率で8〜10%を獲得している。労働党、保守党、自民党に次ぐ支持率だ。小選挙区制度(それぞれの選挙区で最多得票した1人だけが当選する)の英国下院議員選挙で下院の議席を獲得する可能性は極めて低いが、次期総選挙(下院)で、北アイルランドを除く、イングランド、スコットランドとウェールズの全選挙区で候補者を立てると明言しており、労働党に支持率で差をつけられている保守党が神経質になっている。
リフォーム党は、英国独立党(UKIP:UK Independence Party)、そして2018年にはブレクシット党(Brexit Party)を経て、2021年に現在の政党名となった。UKIPは英国のEUからの離脱を目指して1991年に設けられた政党である。保守党内の英国のEU離脱を目指す欧州懐疑派が、移民の増加などの理由で有権者のEU離脱支持が強まりUKIP支持が増加し、党内の造反が強まったことが、キャメロン前首相が2016年にEUを離脱するか否かの国民投票を実施したことの理由である。当時、キャメロンは、英国民がEU離脱に賛成するとは思っていなかった。国民投票でEU残留の結果が出れば、保守党内の造反が抑えられるとの読みであったが、それが裏目に出る結果となった。
なお、UKIPは、2014年の欧州議会議員選挙(地域ごとの比例代表制)で、英国に割り当てられた73議席のうち24議席を獲得、2019年の欧州議会議員選挙では、ブレクシット党として29議席を獲得した。なお、英国のEU離脱で、英国からの欧州議会議員は英国がEUを離れた2020年にいなくなった。
リフォーム党は、英国の移民問題に焦点をあてている。現在の有権者の関心事項は、高いインフレにもたらされた生活費の高騰と経済、そして医療問題、3番目が移民の問題である。それでも、移民の問題が連続して大きく報道されるとその影響力は増す。
保守党の副幹事長を務める下院議員が、リフォーム党に移れば、5年間の議員としての給与を保証すると言われて勧誘されたと示唆したことが報道された。リフォーム党の党首はBBCのテレビ番組で、多くの他の政党の議員と話をしてきたが、お金で勧誘したことはない、また、その下院議員は、このリフォーム党への勧誘の話で保守党の副幹事長のポストを獲得したと発言した。当の下院議員は、それはばかげた話だとした。しかし、2018年まで労働党の地方議員だった人物が、保守党に替わり、前回の2019年総選挙で保守党から初当選し、2023年2月に保守党副幹事長になったのである。不自然だという感は免れないだろう。いずれにしても、スナク首相がリフォーム党の動向に神経質になっていることは明らかだ。
いずれにしても、リフォーム党の影響は大きい。前回の総選挙で保守党に投票した人のうち12%がリフォーム党に投票するとし、労働党に投票するとした人は10%だという。
UKIP並びにブレクシット党の党首だったナイジェル・ファラージュは、リフォーム党の名誉会長である。現在、人気テレビ番組のI’m a Celebrity…Get Me Out of Hereに出演している。ファラージュの政治へのカムバックもささやかれている中、リフォーム党の現党首は、ファラージュが党首として再登板する可能性にも言及している。リフォーム党の行方が注目される。