2024年6月4日夜、保守党を率いるスナク首相と野党第一党の労働党を率いるスターマー党首の討論が実施された。2回目は6月26日に行われる予定である。
この討論後の世論調査の結果は以下の通り。
全体では、ほぼ互角であった。
スナク首相の方が良かった | 51% |
スターマー党首の方が良かった | 49% |
ただし、個別事項では大きく異なる。スターマー党首がスナク首相を以下の差でリードした。「信頼できる」10ポイント、「好感が持てる」16ポイント、「普通の人のことがわかっている」49ポイント、「生活費の問題」13ポイント、「NHSの問題」33ポイント、「教育の問題」21ポイント、「気候変動の問題」24ポイントのそれぞれの差でスナク首相をリードした。それに対し、スナク首相は、「首相らしい」3ポイント、「税金問題」21ポイント、「移民問題」3ポイントの差でスターマー党首をリードした。
どちらが良かったか
スナク首相 | 39% |
スターマー党首 | 44% |
なお、重要な政策並びに人物評価でスターマー党首がことごとくリードしている。
(1)どちらが最も良い答えを持っているか
「NHSと公共サービスの問題」38ポイント、「経済と生活費の問題」16ポイント、「移民問題」8ポイント、それぞれの差でスターマー党首がスナク首相をリードした。
(2)人物評価では、
「正直」25ポイント、「考え深い」18ポイント、「平静を保つ」15ポイント、それぞれの差でスターマー党首がスナク首相をリードした。
なお、6月5日の保守党支持の新聞の朝刊は、YouGovの51%対49%の数字を使って、スナク首相が勝ったとはやし立てたが、Savantaの世論調査結果は、それに合致しない。
党首討論の中で、最も大きな論争を招いたのは、スナク首相が、労働党が総選挙に勝てば、一家庭当たり2000ポンド(約40万円)の増税を(4年間で)実施する、その数字は、財務省の偏っていない国家公務員が計算したものだと主張したことだ。スナク首相は、この主張を1時間の討論の間に9回繰り返したと言われる。これに対して、スターマーは、くだらない話だと主張し、否定した。
「財務省の偏っていない国家公務員が計算したもの」とのスナク首相の主張は、財務省の事務次官が、労働党の影の財務副大臣に宛てた手紙と食い違っており、労働党は、スナク首相は討論でウソを言ったとスナク首相を攻撃した。一方、総選挙議席数予測によると壊滅的惨敗に直面している保守党とスナク首相は、「財務省の偏っていない国家公務員が計算したもの」との主張は止めたが、依然として2000ポンドの労働党増税を主張し続けている。この主張は明らかに根拠に乏しいものであるが、切羽詰まっているスナク首相にとって、YouGovの討論世論調査によると税金問題では優位になっているとされたように、スナク首相の最後の砦となっているようだ。
なお、保守党支持のテレグラフ紙の姉妹誌スペクテイターのフレイザー・ネルソン編集長が、保守党の行った計算方法を使うと、保守党の増税は3000ポンドとなると主張している。