落選した議員の今後

総選挙で落選すれば、ただの人となる。ただの人となるだけではなく、通常、無職となる。事務所のスタッフを解雇し、それまで浸りきっていた政治の世界から離れ、それから何をするか考えることとなる。いずれにしても、まず、仕事を探さねばならない。

落選した元下院議員には、議会からリセトルメント手当(Resettlement Allowance)と清算手当(Winding up Allowance)が支給される。

リセトルメント手当は、一般に、新しい仕事を見つけるまでのつなぎの役割を果たす補助金で、1か月分の給与に勤続年数をかけたものであるが、最大6か月までである。すなわち、33,500ポンド(約620万円:£1=185円)ほど。

清算手当は、勤続年数には関係ないが、スタッフの解雇や、事務所の閉鎖、家具などの撤去などに使われることを想定しており、最大限、ロンドンの選挙区の場合、57,000ポンド(約1055万円)、それ以外の地区の選挙区の場合には、53,000ポンド(約980万円)までとなっている。

労働党の下院議員を13年間務め、2010年に落選した二人のうち、クレア・ウォード(1972年5月9日生まれ)はPharmacy Voiceという薬局の業界団体の会長となった。また、アンディ・リード(1964年9月17日生まれ)は、ラフバラ大学の国際スポーツマネージメントMBAコースのプログラムディレクターである。また、同じ年に落選したジャッキー・スミス元内相(1962年11月3日生まれ)は、今では、テレビにも出て政治についてコメントしながら、バーミンガムにあるNHSトラストの会長も務めている。一方、1997年総選挙で落選した、保守党の元閣外相アンジェラ・ナイト(1950年10月31日生まれ)は、銀行の業界団体のチーフ・エグゼクティブなどを務めた。

落選した後の経歴は様々だが、議員となる前の経歴や、議員在職中に得た経験、知識を売り物にして、それらを活用できる職業を求める人が多い。その姿勢は、日本の落選議員とはかなり異なる。