パーティゲートでさらに苦しむジョンソン元首相

首相在任中に、パーティゲートに関連して下院で「ウソ」と言ったとして、ジョンソン元首相が下院の名誉委員会で取り調べられている。その途中報告書が発表された。パーティゲートとは、コロナ禍、人の集まる機会を厳しく取り締まっていたにもかかわらず、首相官邸などで飲酒などを伴う法律違反の集まりを開いていたという問題である。すなわち自分が作り、厳しく取り締まるよう求めたルールを、自分が破っていたというものだ。これに関連して、ジョンソン元首相は既に罰金刑を受けている。

名誉委員会の今回の報告書では、ジョンソン元首相は、下院で4回にわたり、首相官邸などの集まりは合法だったと「ウソ(mislead)」を言ったかもしれないとした。ジョンソン元首相は、自分には法律違反の認識はなく、しかも自分周辺の役人からもそのようなアドバイスは受けなかったと主張し続けている。しかし、名誉委員会は、ジョンソン元首相は、自分の発言が誤りであったにもかかわらず、これまでそれを訂正しようとしていないとも指摘している。

ジョンソン元首相は、パーティゲートをはじめとする数々のスキャンダルで首相辞任に追い込まれたが、カムバックを模索している。3月下旬に名誉委員会に出席して口頭で質問に答えることになっているが、もし、ジョンソン元首相が「ウソ」をついたと認定されれば、ジョンソン元首相は、一定期間の登院停止、さらには下院議員を失職する可能性もある。

名誉委員会ができることは、下院に処分を勧告することであり、最終的には下院の投票で処分が決まる。多くの保守党下院議員にとっては、そのような投票は極めて厄介なものとなるだろう。保守党は、下院の過半数を大きく上回っており、そのような勧告を拒否することは可能であるが、もし、名誉委員会の勧告に賛成しなければ、既に保守党の支持率が労働党に大きく水をあけられている中、有権者が勧告拒否の保守党下院議員にさらに厳しい目を向けるかもしれない。ジョンソン元首相は、非常に知名度が高く、それが諸刃の剣となっている。なお、ジョンソン元首相は、2022年7月の首相辞任以来、既に500万ポンド(8億円)以上稼いでいるとされる。次期総選挙で、現在の自分の選挙区では勝てないと、選挙区替えを模索していると伝えられるが、政治家として生き残っていけるかどうかは、この名誉委員会の最終判断に大きく左右される。