前途多難のSNP

SNP(スコットランド国民党)党首でスコットランドの第一首相だったハムザ・ユーサフが辞任した後を受けて、かつて党首だったこともあるジョン・スイニーが新党首並びに第一首相に選出された。しかし、SNPの前途は多難だ。ユーサフの辞任の原因は、協力関係にあったスコットランド緑の党との合意を突如破棄し、政権内の準閣僚だった緑の党共同代表の2名を退任させ、それに反発した緑の党がユーサフ第一首相不信任案に賛成する動きを見せたことである。

新第一首相を選ぶ選挙では、7議席を持つスコットランド緑の党は棄権した。その結果、全129議席のうち63議席を持つSNPの指名したスウィニーが過半数を占め、第一首相に選任された。この結果、スウィニー政権は議会で過半数を持たない少数政権であり、これからは、各会派と政策ごとに協力して運営していくこととなる。SNPは、2007年の議会議員選挙で43議席を獲得して最大会派となった後、政権を無難に担当した経験がある。スウィニー第一首相は、2007年から財政担当の閣僚を務め、2007年から2023年までは、2人の第一首相の下、副第一首相を務めたベテランである。

スウィニーの抱える問題は、党内が環境問題やトランスジェンダーなどの問題で分裂していることだ。党是であるスコットランド独立の問題は、英国中央政府がそのような動きを認めないとしている中、行き詰まり感がある。

その中、SNPへの支持率が下降している。前回のスコットランド議会議員選挙は2021年に行われ、次期議会議員選挙は2026年の予定だ。あと2年間の時間がある。しかし、英国全体の下院議員選挙は2025年1月までに行われなければならず、2024年秋にも実施される見込みだ。もし、SNPが来るべき下院議員選挙で大きく議席を失えば、2026年スコットランド議会議員選挙にも影響を与えるばかりか、SNPのスコットランド独立運動にも大きな差しさわりが出る。ユーサフ前第一首相の動きは、英国総選挙を見据えた動きであった。

スコットランドの英国下院における勢力

政党名2019年結果議席現有議席
SNP4843
保守党67
自民党44
労働党12
ALBA未設立2
無所属 1
SNPは2019年から5名の議員を失った。2名は、ALBAへ移り、1名は、保守党に移り、1名は無所属となり、1議席は補欠選挙で労働党に敗れた。

一方、スコットランド地域の直近の世論調査(Norstat :2024年4月9日から12日実施)では、以下のようになっている。SNPは2019年総選挙時の支持率では、他の政党よりも圧倒的に強かったが、昨年末から現在までの支持率は労働党と拮抗している。

政党名SNP保守党労働党自民党緑の党その他
支持率321632948
2019年支持率4525.118.69.51.00.8
SNPは2019年から5名の議員を失った。2名は、ALBAへ移り、1名は、保守党に移り、1名は無所属となり、1議席は補欠選挙で労働党に敗れた。

次期英国下院総選挙では、スコットランドでの下院議員数は、2019年の59議席から57議席に減る。SNPの獲得議席予想には、19議席YouGov: 2024年3月7日から27日調査, 並びにElectral Culculous:2024年5月発表)があり、2019年時の48議席より大きく減少する勢いであり、SNPはかなり厳しい立場に追いやられている。

新党首の役目は党内をまとめ、態勢を立て直し、各種選挙に備えることだが、前途は多難だ。