BBC番組パノラマで、7党の党首インタビューが行われている。最初の党首はスナク首相で、6月10日夜の30分番組に出演した。インタビューするのは、元BBC政治部長で、BBCラジオの看板番組Todayのプレゼンターであるニック・ロビンソンである。
このインタビューはスナク首相にとってかなり厳しいものになることが予想された。一方、スナク首相の1年半の施政、さらに首相になる前の財相時代を含めた4年間、その上、過去14年間の保守党政権下の施政などかなり多くの課題に、30分の時間内で、触れる必要があることから、ロビンソンにとっても厳しいものであった。結局、両者ともに不満の残るインタビューになったと思われる。
スナク首相は、あらかじめ作った筋書き通りにスムーズに対応したように思われる。特に、まともに答えるのが難しい質問には答えず、話を逸らせる、若しくはあらかじめ作った答えを繰り返し話すなど、一般に「政治家の答え」と言われるものを効果的に使った。ただし、このような返答はまともに答えるよりもダメージを減らすのに効果があるかもしれないが、総選挙中に、首相の発言への信ぴょう性を増す、もしくは首相への信頼を増すことにはつながらない。
その一つの例は、6月4日の、労働党党首との2大政党党首討論テレビ番組で、スナク首相が、労働党が総選挙に勝てば「一勤労者家庭当たり2000ポンド(40万円)増税」となると、1時間の番組で10回ほども主張した件だ。ロビンソンが、スナクは、4年間の予想を合わせて積み上げて作った数字を1年のものに聞こえるように言った、財務省の公務員が計算してその数字を作ったと、財務省事務次官の警告に反して主張したと質問したが、それらには答えず、スナクは自分の主張の中身を繰り返し説明したのにとどまった。
また選挙の争点の一つ、不法移民の問題では、スナクが、不法移民が英国に来るのを抑えるため、アフリカのルワンダに送る政策は、飛行機も予約しており、もう少しで実施でき、不法移民数の減少が可能になるとしたが、ロビンソンが、もしそうならば、どうしてもう少し待たず、総選挙を実施することにしたのか、という質問には答えなかった。
スナク首相は、我々は、将来の英国の話をしているのだと、現在達成できていない問題は、「計画」を持つ保守党が解決できると繰り返し主張した。ロビンソンが過去14年間の保守党政権下で繰り返し達成できなかったものを、今さら有権者が信じるかと質問しても、きちんと答えなかった。
いずれにしても、保守党が「一勤労者家庭当たり2000ポンド(40万円)増税」の主張を継続し、「計画」を持つ保守党の方が「計画のない」労働党よりも政権にふさわしいとの議論を続けるのは間違いない。