9月5日月曜日に保守党党首選の結果が発表され、9月6日に英国の66代目の首相が誕生する。その新首相には現外相のリズ・トラスが就任するのが確実だ。9月4日のBBC1テレビの政治番組、Sunday Morning with Laura Kuenssbergにトラスとその対立候補者の前財相スナクの二人の党首選候補者が招かれ、それぞれ短いインタビューを受けた。
そのインタビューでトラスは、現下のエネルギー価格高騰、そして消費者の光熱費負担急増にどう対応するか具体的には答えなかった。番組の中で、ある小さなレストランは、これまでの光熱費が2900ポンド(約47万円)だったのに、今や22000ポンド(約355万円)の請求書が送られてきたという例が紹介されたが、この問題は、一般消費者だけではなく、企業にとっても非常に大きな問題である。トラスは、首相就任後1週間で対応策を発表し、1か月後には、具体的な長期政策を発表するとしただけであった。このインタビューの中で、NHS(国民健康サービス)の治療・手術をはじめとする膨大なバックログやコストの問題についても聞かれたが、トラスは、新しい厚相がきちんと政策を立て、発表するとした。8月30日の選挙演説会でも政府の財政政策について聞かれたが、トラスは、それは新しい財相が担当することだと主張した。
これらの発言を聞いて感じることは、トラスは、自分のこれまで発表した政策とその実際の適用を整合的に行うことは難しいということを十分に分かっており、その責任を担当の大臣に負わせる意図があるのではないかということである。すなわち、うまくいかなければ、自分が責任を取らずに、それぞれの大臣の首をすげ替えることで対応するつもりなのではないかということである。
トラスへの期待は、大きく下がってきている。特に2019年の総選挙で保守党に投票した有権者の評価は、この党首選のはじめ(8月3日のOpinium世論調査)と比べると、現在(8月31日のOpinium世論調査)では大きく下がっている。例えば、首相としての能力があると見る人は、55%から35%となった。また、トラスを信頼できるかという質問に対しては、プラスの評価からマイナスの評価を引いた数字で、8月3日には33%だったのが、8月31日にはマイナス2%になった。
トラス政権の行方は、首相就任後1週間で見えてくるだろう。まずは、消費者や企業への緊急救済策が強力で多くの支持が得られるかどうかがカギとなるように思われる。