英国の喫煙の問題

スターマー首相が、英国の喫煙対策の強化を図ることを改めて強調した。

英国では、既に公共施設やレストランやパブなどで、禁煙室以外での屋内の喫煙は禁じられているが、その近く、例えばパブの庭での喫煙なども禁ずる方向に向かうようだ飲食業界からは、そのような強化策に反対する声が上がっている

英国では、そのような例として東京の受動喫煙対策が取り上げられている。

なお、日本の喫煙率は、2022年に14.8%(20歳以上)だった。英国の喫煙率は、2022年に12.9%(18歳以上:法定年齢)である。そのうち、英国では、電子タバコの割合が増加しており、8.7%で、そのうち最も高い使用年代は、16歳から24歳であり、2021年の11.1%から2022年の15.5%に増加している。特に16歳から24歳の女性で毎日電子タバコを吸っている人は、2021年の1.9%から2022年の6.7%になっており、早期の対策が望まれている。

先のスナク保守党政権では、その対策を立て、今年2月、法案を議会に提出したが、7月4日に総選挙を実施することとし、下院を解散したために、その法案は廃案になった。スナク政権の法案では、2009年1月以降に生まれた人はタバコを買えなくすることとしたもので、たばこを買える年齢を徐々に引き上げていく方針だった。現スターマー労働党政権は、前政権の対策を引き継ぐとともにさらに強化する構えのようだ。

スターマー首相は、喫煙による肺の病気でなくなる人が年に8万人おり、喫煙が原因で肺の病気になる人たちの治療ケアでNHSへの負担が大きいことを指摘しており、NHSへの負担を軽減することがその目的の一つだ。

スターマー首相は、議論のある問題は、5年の任期のうち早めに対応していく方針で、この問題もその一つのように思われる。

暴動と過激主義

時に、平和的なプロテストと過激主義は紙一重の差しかない場合がある。

7月30日に始まった極右らによる一連の暴動は、一応収まったようだ。警察は引き続き、実際に暴動に加わった人たちだけでなく、ソーシャルメディアなどで騒ぎを煽った人も逮捕している。検察は次から次に起訴しており、既に裁判所で刑期を言い渡された人の数はかなりになる。今回の暴動の後片付けがすむのはまだ数か月先のことになるだろう。

今回の暴動は、7月29日に3人の少女を刺して殺した犯人が、ボートで英国に渡ってきた亡命希望のイスラム教徒だとソーシャルメディアなどで広く広められた偽情報に発する。実際、犯人は英国生まれの18歳の男であったが、ソーシャルメディアなどで、「人種差別」「宗教の偏見」「反移民」の感情を噴出させた。単にプロテストへの参加を呼び掛けたものが多かったが、極右の先導する暴動に火をつける結果となった。

今回の暴動では、これまでのところ最長の刑期は3年4か月だが、検察は、刑期10年にのぼるテロリズムに該当するものもあるとしている。これは、主に暴動騒ぎを鎮静化するための発言かもしれないが、テロリズムの見方を変える必要がでてきているようだ。

これまでテロリズムを「イスラム過激派による暴力」とする例が多かったが、今回のような「極右による暴力」もテロリズムとして同じようにみなすべきだというのである。「極右による暴力」はこれまで、比較的低レベルの問題と扱われてきたが、今回の例でみられるように、亡命希望者の収用されている宿泊場所に押し寄せ、放火するなど非常に深刻なものがある。

一方、気候変動のプロテストで、英国の高速道路に立ち入り、長時間にわたり通行を妨害した人に禁固5年が言い渡された。これに対しては、平和的なプロテストに厳しすぎるという意見がある。

なお、昨年10月7日のハマスのイスラエル攻撃で火が付いた戦争で、イスラエルがパレスチナ人を既に数万人殺害しているとし、それをやめるよう求める反イスラエルのプロテストが英国各地で行われている。警察は、黒人、アジア系、少数民族や左翼のプロテストをする人たちに甘いと批判する保守系の人がいる。そしてこれを「二層システム」だと攻撃するが、警察はそのような嫌疑を一切否定している。

何が厳しすぎるか、何が甘すぎるかは、それぞれの人の立場で異なる。今回の暴動でもそうだ。政府は社会の見方を常に念頭に置いておく必要があるが、テロリズムを含む過激主義には断固反対し、厳しく取り締まる方針には理由があるように思われる。