サッチャーの気配り(Caring Thatcher)

1979年から1990年まで英国の首相をつとめたマーガレット・サッチャーは、しばしば「鉄の女」と呼ばれ、タフであったことで有名だ。最近明らかになったフォークランド紛争当時の文書で、サッチャーの側近が、フォークランド諸島に侵略したアルゼンチン相手に戦争に踏み切るのに反対したが、戦争に踏み切ったことがわかった。そして勝利を得た。睡眠時間4時間で多くの仕事をさばき、大臣たちよりも政策に詳しかったと言われる。

そのサッチャーの気配りはこれまでにもJohn CampbellのMargaret Thatcher Volume Two: The Iron Lady (London: Jonathan Cape 2003)などで触れられている。最近出版された、ジリアン・シェパードのThe Real Iron Lady (Bitback Publishing, 2013)でも、気配りに触れている。

サッチャーのスペシャル・アドバイザーであったElizabeth Cottrellによると、スピーチの準備で午前3時になった時、「英国の首相が自分のために風呂を入れてくれ、ナイトドレスと歯ブラシを持ってきて、ベッドが冷たいといけないからと湯たんぽも入れてくれた・・・翌朝7時には紅茶を持ってきてくれた」という。

双子の子供を持つ母親、そして女性としての気配りが、タフな「鉄の女」の背後にあったことがわかる。

なぜ英国の人がアイルランド大統領になれるのか?(Who Can Be Irish President?)

2011年11月、マイケル・D・ヒギンズがアイルランド大統領に就任した。この際の大統領選挙には、英国の下院議員で、また北アイルランド議会議員でもある北アイルランド政府副首席大臣のマーチン・マクギネスも出馬した。

マクギネスは、北アイルランド議会で第2の政党であるシン・フェイン党の議員であり、アイルランド大統領選挙に落選した後も、そのまま北アイルランド議会議員で、北アイルランド政府の副首席大臣である。下院議員は、先だって辞職し、2013年3月にその補欠選挙が行われる。

英国の下院議員や地方政府の議員/大臣が、異なった国であるアイルランドの大統領選挙に出馬できることには違和感を覚える人が多いかもしれない。

これには、歴史的な経緯がある。アイルランド憲法で、アイルランドはアイルランドの全島(第2条)としているが、これには北アイルランドを含んでいる。アイルランドはかつて英国の一部であった。アイルランドが独立しようとした時、プロテスタントの人口の多い北アイルランドを英国の一部として残し、残りの主にカトリックの住む南アイルランドに自治、そして独立を認めたという歴史に関係している。

アイルランド大統領選挙には、アイルランド市民が立候補できる。これは、基本的にアイルランドの島内(北アイルランドを含めて)で生まれた人である。前大統領のメアリー・マッカリースは、北アイルランドのベルファストで生まれた。なお、大統領選挙への投票権は、18歳以上のアイルランド共和国の住民でなければならない。つまり、北アイルランドの住民は、アイルランド大統領選挙に立候補できるが、投票はできない。

さらに大統領選挙に立候補するためには、幾つかの条件がある。
①アイルランド国会議員(上下両院の226人)のうち20人以上の推薦
②地方自治体(34ある)のうち4以上の推薦
③本人の推薦(現職であるか元大統領のみ)

このうち、マクギネスの場合は、アイルランドのシン・フェイン党国会議員の推薦を得た。