国勢調査で見る世界都市ロンドン(Changing London the World City)

ロンドンは、ますます国際都市の名に値する都市となったことがイングランドとウェールズの2011年国勢調査でわかった。

ロンドンに住んでいる人の3分の1以上は海外で生まれた人で、4分の1近い人たちは、英国民でない。そしてロンドンの住人に占める、白人の英国人は半分以下となった。2001年には白人の英国人と自分で見なす人は430万人で全体の58%だったが、それが2011年には370万人に減った。人口の45%である。

ロンドンで2番目に多いのは、インド系の人たちで、150万人。3番目は、黒人の110万人。4番目は、英国人以外の白人で100万人という具合に続く。特に非白人の多い、ロンドン東部のニューハム区では白人の英国人はわずか17%しかいない。

また、イスラム教徒の多いのは、タワー・ハムレット区の34.5%、そしてニューハム区の32%と続く。

宗教的には、イングランドとウェールズで、キリスト教徒が2001年には3730万人いたのに対し、2011年には3320万人と410万人も減った。一方では、無宗教者が770万人から1410万人と大きく増え、また、イスラム教徒も150万人から270万人とかなり増えている。

政治の目で見る国勢調査(How to look at the Census)

国勢調査の結果は政治家にとっては、情報の宝庫と言える。政治家はこれから学べる、もしくはそれまでの情報や分析を再確認できるからだ。ここでは、イングランドとウェールズの2011年の国勢調査に関するタイムズ紙のフィリップ・コリンズの見方に若干のコメントを付け加えてみたい。なお、コリンズは、ブレア元首相の下でスピーチライターを務めた人物で、プロとしてこのような分析をしてきた人である。

①人口の30%は今や専門的、もしくは技術的な職業についている。今でも多くの人々はブルーカラーとホワイトカラー、そして現場労働者と管理職といったような、かなり一面的な見方をするが、現代では、こういう固定的な見方では当てはまらない人たちが増えている。こういう人たちの支持を得られなければ、選挙で勝てない。かつてブレア元首相は、こういう人たちやいわゆる中流階級を吸収するために、労働党の看板をニュー・レイバーとし、それまでの労働党の路線を修正した。
②人口の4分の1近い人たちは、健康・医療、ソーシャルワーク、そして教育の分野で働いている。つまり、こういう人たちの支持を受けられるような政策を訴える必要がある。保守党が「思いやりのある保守党」を打ち出しているのはこれに関係がある。
③イングランドとウェールズの人口が2001年と比べて370万人増え、5610万人となったが、この増加した人口の半分は、移民によるものである。外国で生まれた人の大多数は労働党へ投票する。
④6人に1人は65歳以上となったが、この層は投票率が高い。この人たち向けの政策は重要である。
⑤10人に1人が病気の家族の面倒をみている。英国でもソーシャルケアの危機が叫ばれているが、この分野への政策が重要である。
⑥英国人には家を持つ、という夢がある。家の所有率が2001年の64%から2011年の60%に下がり、そして借家は、9%から15%に上がった。国民の夢の回復が重要である。