英国のウクライナ難民対策の失敗

2022年2月24日、ロシアが隣国のウクライナへの侵略を開始。それからわずか2週間余りでウクライナ(人口4100万人)から国外に出た難民は250万人を超えた。欧州各国は、これらの難民受け入れにすばやく対応した。隣国のポーランドは既に172万人受け入れていると言われる。

一方、英国は、その対策に後れを取っている。フランスのマクロン大統領は、英国のジョンソン政権は、ウクライナ難民をじゃまもの扱いしているとし、ただでさえ悲惨なのに、さらなる苦しみを与えている、また、偉そうな言いぶりで世界に先んじて戦争の犠牲者を助けているように見せかけているだけだと批判した。

英国内でも、ジョンソン政権の対応には、批判が強まっていた。他の欧州の国では要求していないビザを英国来るためには必要だとし、英国に渡るためフランスのカレーに着いたウクライナ難民たちに、英国へのビザを取るためにフランスのパリやベルギーのブリュッセルに行くように求め、さらに申請のための予約は、まだ何週間も先だと言われるような事態が生じていたのである。

ジョンソン首相率いる保守党の下院議員からも批判が強まり、結局、ビザの申請は3月15日からオンラインでできるようにした。さらに、ウクライナ難民の受け入れ態勢を作るために、受け入れる家族には、一部屋当たり月350ポンド(約5万2千円)を払うと発表した。ただし、これらの後手に回っている対策がうまく回っていくかには疑問が出ている。

難民問題を所管しているパテル内相は、事態を十分に把握しないまま、誤った発言が相次ぎ、保守党内からも辞任すべきだという声が出た。ただし、この難民問題はジョンソン首相にも大きな影響を与えかねない。統計局が、ジョンソン首相の統計の使い方を公式に批判したように、言うことと現実に差があるジョンソン首相は、ロシアのウクライナ侵略問題でも同じようなことを繰り返しているような印象がある。パーティゲートなどのスキャンダルから離れ、有権者からよくやっていると見なされることを期待していたと思われるが、必ずしも目論見通りに事が進んでいるわけではないと思われる。