保守党の党首選挙の投票が9月2日に締め切られた。結果は9月5日月曜日に発表される。その後、ジョンソン首相がエリザベス女王に面会し、首相を辞任し、保守党党首選の勝者を後任の首相に推薦する。そしてその人物がエリザベス女王に面会して、首相に任じられるという段取りだ。今回は、96歳のエリザベス女王の身体を気遣い、現在過ごしているスコットランドのバルモラル城から移動しないこととしたため、ジョンソン首相とその後任首相は、9月6日バルモラル城のエリザベス女王に会いに行くこととなった。そのため、新首相の就任は9月6日火曜日となる。その翌日の水曜日には、新首相が恒例の「首相への質問」で答弁する。
その新首相には、保守党下院議員の選んだ2人の候補者の内、現外相のリズ・トラスが就任するのが確実である。8月31日にロンドンのウェンブリーアリーナで行われた最後の保守党党員の選挙演説会(LBCラジオで放送された)では、対立候補のスナク前財相への声援の方が多いように聞こえたが、保守党党員を対象に行われた世論調査では決定的にトラスが優勢である。
現在の政治情勢は、誰が首相になっても極めて難しいものだ。ロシアのウクライナ侵攻、世界的なエネルギー価格の急上昇などからくるインフレ、光熱費の急上昇、そして生活費の高騰で、国民の多くが苦しみ、不安になっている。政権を握る保守党の支持率は、9月3日現在の直近の4つの世論調査で、労働党に10%以上の差をつけられている。
この中、トラスが現下の問題にきちんと対応できるのかどうか?保守党党首選に勝つため、トラスは、光熱費が大きく上昇し、インフレで生活苦に直面する人々への政策を明確に打ち出すことを拒みながら、保守党党員受けする、保守党右派の「勇ましい」ともいえる政策を次々に打ち出した。減税する、新税は課さない、防衛費を大幅に増加する。また、インフレで実質賃金が下がっている中、賃金上昇を求める労働者のストライキの権利を弱めるとし、さらにスコットランド独立を求めるスコットランド国民党(SNP)の党首であるスコットランド首席大臣をこき下ろし、ウェールズの首席大臣(労働党)をからかい、フランスのマクロン大統領を敵か味方かわからないと発言した。
トラスには「人間手りゅう弾」というあだ名がついている。トラスが触ったものは爆発するから注意して扱わなければならないということだそうだが、トラス政権が爆発しないように運営できるかどうか注目される。