7月4日の総選挙で大勝利を収め、政権についた労働党は、それまで14年間政権を担当した保守党を厳しく批判、前ハント財相を「嘘つき」と呼んだ。
リーブ財相は、7月29日、下院で、前保守党政権から引きついだ財政についての調査の結果を発表した。前保守党政権は、220億ポンド(約4兆4000億円)のブラックホール(財源の手当てのない政策)を残したとしたのである。そのために、様々なプロジェクトの見直しや財源の手当てに取り組まざるを得ず、特に、年金受給者の冬季燃料費手当は、年金受給者で様々な追加手当を受けている人に限定することとし、15億ポンド(約3000億円)節約した。これには高齢者団体から批判を受けた。
ただし、7月30日に行われた世論調査によると、政府の方針に賛成する人は47%、反対する人は38%という結果が出た(YouGov:サンプル数3189)。有権者の一定の理解は得られたようだ。
リーブ財相は、財相職に就いて、保守党政権の残した「負の遺産」にショックをうけたとしたが、ハント前財相は、リーブ財相は、あらかじめその状態を十分理解していたはずだと主張した。ハントは、リーブは、就任前に、財務省のトップから財政の状況について十分話を聞いていたはずだとしたが、財務省のトップの経験者から、そのようなことはないと否定された。さらに、独立機関である財政責任局OBRから財務省からきちんとした情報が得られていなかった、さらに権威のある財政研究所(IFS)が、前政権が移民・亡命関係の予算を計上せず、使っていたことは信じがたいと批判されるなど、前保守党政権の財政規律の乱れが明らかになった。
確かにハント前財相には、厳しい財政にもかかわらず、スナク前首相や党内から減税の要求が非常に強く、非常に厳しい状況にあったことは理解できる。しかしながら、ハント前財相が自分の仕事を十分理解していなかったことに問題の根底があるように思われる。