ジョンソン首相が新型コロナ法規違反で罰金

過去2年余り、新型コロナが世界を席巻してきた。英国ではこれまでに17万人以上の人が亡くなっている。英国でも新型コロナの感染拡大を防ぐためさまざまな方策が講じられてきた。ワクチン出現後は、ワクチン接種に重点が移されたが、それまで最も有効な方法だと考えられていたのは、人同士の接触を制限することだった。そのため英国では、法律で人の接触を厳しく制限した。そのため、家族の死に目にも会えないという人が続出した。ところが、そのような状況の中で、首相官邸や一部の役所などでは、そのような法律を無視するような集まりやパーティが開かれていたのである。

「パーティゲート」は、そのような集まりが開かれていたことがわかり起きたスキャンダルである。本来、法を作り、それを守るべき議員や役人が、一般の人にはそれを強いておきながら、自分たちはそれを無視していたのである。すなわち、自分たちに当てはまる法と一般の人に当てはまる法は違うということである。

パーティゲートが発覚し、野党を含む多くの人に畏怖されている、政府のトップ官僚の1人が調査を実施し、中間報告を発表した。その結果、ジョンソン首相の誕生日パーティを含めて数々の集まりが特定され、それを受け、それまでパーティゲートに関わるのを避けていたロンドン警視庁が本格的に捜査することとなり、新型コロナ法律違反に係る罰金刑通知を次々に出している。これまでに50の通知が送られ、ジョンソン首相、スナック財相、それにジョンソン首相夫人もその通知を受けた。この捜査は、これで終わったわけではなく、その数はさらに増えるものと見られている。なお、罰金刑を拒否して裁判所で争うという道もあるため、通知を受けただけで刑が確定するわけではないが、ジョンソン首相らは謝罪して、直ちに罰金を支払った。

ただし、この問題のためにジョンソン首相の地位が直ちに危うくなるとは見られていない。ジョンソン首相率いる保守党の支持率は4月に入ってからの6つの世論調査によると、平均して野党労働党を5.5%下回っている。しかし、ロシアのウクライナ侵略という危機的な状態でトップを替えるのは得策ではない上、ジョンソン首相の後継者にふさわしい人が直ちにいないという事情もある。これまでスナック財相が最も有力と見られていたが、急激な物価上昇の中、生活苦にあえぐ人々の救済が十分ではないという批判があった上、財相夫人の問題が出てきて、ジョンソン後継の目がなくなった。財相夫人は、ビリオネアのインド人ビジネスマンの父を持ち、エリザベス女王よりも金持ちだと言われている人である。非居住者の立場を利用して、合法だが、英国での税金を十分支払っていなかったと批判された。

それでも、ウクライナ状況の変化と5月5日に行われる全国的規模での地方選挙の結果次第では、ジョンソン首相を取り巻く情勢が変化する可能性はある。