メイ首相の二枚舌

イギリスの下院で、上院から返ってきたEU離脱法案の討議と採決が行われた(その結果)。上院ではメイ政権の意思に反して15の修正が行われたが、下院での採決を巡り、保守党議員の中に、メイ政権の指示に背いて、修正に賛成する動きがあるのではないかと見られていた。当初政府側は6月12日にすべてを処理するつもりでいたが、議員らの反発を受けて2日間に伸ばした。結局、メイ首相の妥協策でその動きは抑えられた(6月12日、13日)が、その後始末を巡って様々な憶測が強まっている。

メイ首相の出した妥協策とは?まず、ソフトな離脱を目指す議員たちに議会が最後にどのような離脱をするかを決められるようにすると約束したと言われる。一方、強硬離脱派には、そのような約束はしていないとしたと伝えられる。すなわち、相反する妥協策で、保守党の中の強硬派とソフトな離脱派を宥めたようだ。

これは二枚舌といえる。タブロイドのサン紙もそれを第一面で指摘した。今回メイ首相が行ったのは、危機を先送りしただけで、早晩、さらなる危機にさらされると見られている

メイ首相がこのような策に打って出たのには、単なる引き延ばし以外の理由があるように思われる。例えば、6月末のEUサミットで何らかの妥協がなされる可能性を期待しているのかもしれない。もしくは7月には夏季の休会が控えており、9月に再開されるまで、次の手を準備する時間があると考えているのかもしれない。そして何らかの方法で10月末ごろまでに何とかEU側と合意をすることを考えているのかもしれない。さらに2007年から8年にかけての世界信用危機のような事態の発生、または、サッチャー政権でのフォークランド紛争のような外部要因で、EU離脱問題自体が、全く異なる視点で対応する必要が出てくる可能性が出てくるかもしれないと考えているのかもしれない。

ただ、メイ政権は弱体化しており、今回のような綱渡りを繰り返せる状況にはない。その一方、もし、メイ政権がこの下院での投票で敗れていれば、保守党の党首交代の機運が盛り上がる可能性があった。そしてこの夏に党首選を行うことは可能だったろうが、その機会は消えたように思われる。一方、来年3月29日のEU離脱を控え、イギリス議会と欧州議会に離脱条約などを審議、承認させる時間の必要があることを考えると、今秋に党首選を行うことも難しい。メイ首相は、これらのロジスティックの問題を背景に首相に居座る思惑なのだろうが、果たしてその通りにいくか?ボリス・ジョンソン外相が指摘したようなメルトダウンの可能性もあろう。

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