国家公務員改革を実行する人(The Person who was selected to do Civil Service Reform)

国家公務員改革計画の実施を担当する内閣府局長ポストに就いたのは、公募で選ばれた、キャサリン・カースウェル(Katherine Kerswell)という地方自治体出身の女性である。

まず、この背景を見てみよう。現在の連立政権は、国家公務員改革に力を入れている。その目的は、大きく分けて以下の4つである。

① より小さな政府。内閣府大臣フランシス・モウドが、政府のスタッフの数は44万4千人で、第二次世界大戦以降最低だと今年2月に発表したが、それよりさらに小さな政府を求めている。
② より統合された政府。特に二つ以上の省庁が関わる問題では、処理に非常に長い時間がかかる。同じ省庁内でも同様の問題がある。これらの改善。
③ 問題により迅速に対応できるようにする。プロセス重視から結果重視への移行。
④ 大きなプロジェクトの運営能力の向上。

要は、効率化とスタッフの質の向上で、恒常的な財政削減を可能にしようとしているのである。この計画は、モウド内閣府大臣と公務員トップ(Head of the Home Civil Service)のボブ・カースレイクが共同して今年6月に発表したものである。

さて、カースウェルは、地方自治体に25年間勤め、そのうちの14年間、4つのカウンシルでチーフ・エグゼクティブ職を務めてきた。なお、このチーフ・エグゼクティブはそれぞれの地方自治体の事務方のトップである。

地方自治体の関係者がなぜ、中央政府の、しかも政府全体を統括していく立場の内閣府の局長に任用されるのだろうか?

これまで行政にも外部からの人材が必要だとして民間などからの人材登用を試みてきた経緯がある。しかし、特に民間から来た人たちには、行政の中での働き方になじむことができなかった人が多い。しかし、地方自治体出身者やNHS関係出身者は、比較的それに適合しやすいといわれている。カースウェルは、カースレイクに引き続き、地方自治体出身で政府の重要な仕事に就いた人物である。

ただし、地方自治体出身者が必ずしも優れた仕事をするとは限らないようだ。例えば、現在の歳入税関庁(HMRC)のチーフ・エグゼクティブの例だ。地方自治体出身者で、幾つかの地方自治体のチーフ・エグゼクティブ職を経験し、全国でロンドンを除いて最も大きな地方自治体であるバーミンガムのチーフ・エグゼクティブとなった。その後、2005年に内務省の移民などを担当する局長職に就き、そして、その分野の業務をより専門的に独自性を持って執行するUKBAのチーフ・エグゼクティブに就いた。その後、運輸省の事務次官に応募して2010年に就任し、その後HMRCのチーフ・エグゼクティブとなった。このポストも事務次官のポストであるが、その前の運輸省の事務次官より格上である。ここまではサクセスストーリーと言えるかもしれない。ところが、その後、UKBAでこの人のリーダーシップの下、多くの問題があったことが発覚した。

確かに大きな地方自治体と中央政府は似通った面があるが、中央政府の方が扱う範囲が広く、より専門的だ。さらに、組織文化が異なる。地方自治体の運営責任者をしていたといってもそれだけでは足りないだろう。それにプラスαが必要だ。カースウェルの仕事ぶりが注目される。