メージャー政権の欧州問題の再来?(Major’s Tory Eurosceptic Mess Again?)

ある保守党下院議員のEUの国民投票を来年行うべきだという発言を聞いて、ジョン・メージャー首相の保守党のことを思い出した。

メージャー首相率いる保守党は、1997年の総選挙でブレア労働党に地滑り的大敗を喫した。

メージャー政権下では、現在のキャメロン政権と同じく、失業が減り、経済は上向いていた。ブラック・ウェンズデー(ポンド危機)があり、また、議員の数々のスキャンダルや1979年から続く保守党政権への飽きもあった。しかし、中でも大きく保守党を揺るがせたのは、EUとの関係の問題だった。

EUからの撤退や権限関係の見直しを求める欧州懐疑派が党内を動揺させていた。さらにEUに留まるかどうかの国民投票を求めるジェームス・ゴールドスミスの国民投票党が出現し、保守党が分裂したまま選挙戦に突入した結果だった。

10月6日、保守党下院議員のアダム・アフリエー(Adam Afriyie)がEUに留まるかどうかの国民投票を2015年の総選挙の前に来年10月に行うべきだと提唱した。

アフリエーは無役だが、キャメロン後の保守党党首の座を狙っていることが今年初めに報道された。アフリエーの動きは、この野心と結びついていると見られているが、その提案は、キャメロン首相がこれまで慎重に取り扱ってきた英国とEUの関係戦略を大きく揺るがす可能性がある。

キャメロン首相は、もし2015年に予定される次の総選挙で勝てば、2017年末までにEUに関する国民投票を実施すると約束した。その前に他のEU加盟国と交渉し、EUから一定の権限を取り戻した上でその国民投票を実施する計画である。

これは、保守党からかなりの支持が流れている英国独立党(UKIP)対策である。つまり、キャメロン首相は、EUの国民投票を実施すると約束することで、欧州懐疑的な保守党員と一般有権者を納得させようとした。

しかし、それでは十分ではないという批判に対応するため、その2017年国民投票を法制化しようとした。ところが、親EUの自民党と連立を組んでいるため、2017年国民投票を政府提案で法制化できない。

そこで議員提出法案の時間を使ってその法律を推進することとし、7月に議員提案で「欧州連合(国民投票)法案」を提出したのである。その法案は11月に討議が始まる。

しかし、議員提出法案に使える時間には制限があり、しかも自民党と労働党の多くが反対しているために、この法案が法律になる可能性は少ない。それでもキャメロンはこの法案を推進することで保守党の国民投票実施の決意を示そうとしている。

アフリエーは、キャメロンの考えは明確ではないという。2017年ということになれば、次期総選挙でUKIPが保守党から多くの票を奪う可能性がある。その結果、労働党が政権につけば、国民投票そのものがなくなる、つまり、国民はEU国民投票の機会を失うことになる。それより次期総選挙前に行う方がよいというのである。

そして次期総選挙前に結果が出れば、保守党はUKIPをもう恐れる必要はないという理屈だ。アフリエーは、先述の議員提案を修正して、来年10月にEUの国民投票を実施させようというのである。

アフリエーの提案には支持者があまりおらず、そのような修正案が通る可能性は少ない。むしろ限られた時間がさらに少なくなると批判されている。

ただし、問題は、このままではEUの国民投票そのものがなくなる可能性が指摘されたことだ。この可能性は誰もが感じていたことだが、改めてはっきりと指摘されると、上記の議員提出法案で一旦休戦状態になった保守党内を動揺させる可能性がある。

キャメロン政権とメージャー政権末期の違いは、メージャー保守党は当時ブレア労働党に世論の支持率で大きく引き離されていたが、キャメロン保守党は一桁代の差に留まっていることだ。

それでも来年5月の欧州議会議員選挙でUKIPが保守党より多くの得票をするようなことがあれば、保守党は再び大きく動揺するだろう。

なお、英国では選挙にも賭けがある。2014年の英国での欧州議会議員選挙で最も多い票を獲得する政党の賭け率は賭け屋大手のウィリアム・ヒルでは以下のようになっている。
UKIP 10/11、労働党 15/8、保守党 7/2で、UKIPが優位に立っていると見ている。

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