リフォームUK党のあがき

7月4日(木)の総選挙で、リフォームUK党が、何議席か獲得する可能性が出ている。そのファラージュ党首の立候補している選挙区で、選挙運動員数人が人種差別をはじめとする極めて下劣な発言をしているのをテレビ局Channel 4の覆面リポーターが録画し、6月27日のニュース番組で報道した。

ファラージュは、6月28日夜に行われたBBCの番組に登場し、司会者と聴衆から質問を受けたが、その最も大きな質問は、Channel 4の報道に関するものだった。ファラージュは、選挙運動員の1人で、最も大きな批判の対象となった人物は、俳優であり、Channel 4に雇われた、やらせだったと主張した。ファラージュの言い分に証拠はない。Channel 4は、その報道に落ち度はなく、公正で、Channel 4が該当の選挙運動員に会ったのは、その時が初めてだったと説明している。

6月29日には、ファラージュは、選挙委員会にChannel 4の選挙の不法妨害を訴え、テレビ局などを監督するOfcomにも調査を申し入れたと主張した。6月28日のBBCの番組で司会者から指摘のあった、過去に問題のある言動をしていた3人の総選挙候補者に関しては、たとえ当選しても、リフォームUK党とは関係がないとしたが、投票用紙には既にそれぞれの政党名と名前が印刷されているので、これらの候補者の選挙区の有権者には、それでもリフォームUK党に支持を表明するために投票してくれと訴えた。

一方、6月28日のBBCの番組では、聴衆の不当な操作があったとして抗議し、BBCが謝罪しない限り、BBCの番組には出演しないと主張した。ファラージュは、なりふり構わず、リフォームUK党の現在の問題は、リフォームUK党が自ら招いたものではないと主張しているように見える。

6月28日の番組では、ファラージュは、なぜファラージュが一部の人たちに人気があるかの片鱗を見せた。歯切れのいい話をする。しかし、その主張の多くは、聞いたことを適当につなぎ合わせたようなもので、本当に理解して話しているわけではないように思われる。その例の一つは、フランスから英国に小さな船で渡ってくる亡命希望者たちの対応である。ファラージュは、海の上でこれらの人たちを捕獲して、フランスに戻す、海軍を使うというのである。威勢のいいように聞こえるかもしれないが、実際には、そのようなことは、フランスとの了解なしにはできない

いずれにしても、Channel4の報道が、リフォームUK党を大きく揺るがしたのは事実だろう。

停滞傾向にあるリフォームUK党

右のリフォームUK党の支持が停滞している。さらにリフォームUK党の運動員に、強い人種・同性愛偏見を持つ人がいることが大きく報道され、リフォームUK党の勢いがどうなるか注目される。

7月4日投票の総選挙が始まった後の6月3日、ナイジェル・ファラージュがリフォームUK党の党首に就いた。ファラージュは、英国独立党(UKIP)の元党首で、これまで小選挙区制の総選挙に7度立候補したが、一度も当選したことがない。地域比例代表制で選ばれる欧州議会議員選挙では、英国のEU離脱を唱えたUKIPを率い、21年間欧州議会議員を務めたが、英国がEUを離脱したため、その議席がなくなった。

そのUKIPを基に生まれたのが、リフォームUK党である。今回の総選挙で、保守党への支持が弱い中、保守党に見切りをつけて、リフォームUK党を支持する人が増え、さらにファラージュがそれまでの名誉会長職から党首に就き、大きく報道され、世論調査の支持率が大きく向上した。支持率は、11%程度だったのが19%程度まで上昇し、保守党の支持率を上回る世論調査がいくつも出現した。しかし、ファラージュのウクライナ問題を巡る、「西側のNATOやEU拡大がロシアにウクライナ侵攻を触発した」旨の発言で、支持が17%程度まで下がってきた。さらに今回のテレビ局Channel 4の覆面リポーターが、ファラージュの立候補している選挙区で密かに撮ったビデオで、ファラージュの幹部運動員らが強い人種偏見や外国人嫌いの発言をしていることが明らかになった。ファラージュは、そのような発言は非難されるべきだとし、それに関係した運動員は、もう自分の選挙に関係していないとしたが、リフォームUK党の本質が大きく浮き彫りになったことで、支持率が再び上昇することは難しいと思われる。

この展開で、漁夫の利を得ると見られているのは、保守党である。前回の2019年総選挙で保守党に投票した有権者のかなり多くがリフォームUK党に支持を移しているが、その一部が保守党に再び返ってくる可能性があるからだ。それでも、労働党が大勝利を収める情勢は変わっていないと思われる。

今回のリフォームUK党の問題の影響がどの程度かは、今回の問題を反映した世論調査が出てくる数日後になるだろう。保守党とリフォームUK党への支持動向、そして労働党への影響など注目される。