次期下院総選挙を決める5つのポイント(What Determines Next General Election)

次期総選挙まであと1年余り。その選挙を決めるであろうと思われる要素をAnthony Wellsが指摘している。これらのポイントは重要だと思われるので若干のコメントを付け加えながら紹介しておきたい。

1.有権者の経済動向の認識

英国の経済成長はG7のトップと予測されている。有権者の英国の経済成長への信頼はアップしており、かつて財政削減は経済に悪影響を与えると見ていた人たちが考え方を変えてきている。しかしながら有権者は個人的には英国の経済成長の便益を感じていない。失業率は下がり、賃金は上昇しており、生活費の上昇と収入の差は縮まっている。

そこでの課題は、
➀ あと13か月で人々がその恩恵を肌身に感じるかどうか?
② 経済がこのまま順調に成長していくか?

さらに、経済成長が順調に推移しても、有権者がその恩恵をキャメロン保守党の実績と見て、保守党に投票するかどうかという点がある。

1997年にメージャー保守党政権はブレア労働党に大敗を喫したが、経済は順調だった。しかし、有権者はそれをすでに織り込み済みで、ほかの面に目を向けていた。つまり、経済が良くても、有権者がそれと政権との関係を意識し、自分たちが経済成長の恩恵を受けるためにはその政権でなければならないという強い認識がなければ必ずしも票には結びつかない可能性がある。

2.労働党のミリバンド党首の評価

労働党への政党支持率は保守党より6ポイントほど高いが、有権者へのミリバンド党首への評価は低い。保守党のキャメロン首相に大きく差をつけられている。ミリバンドは多くの有権者に「弱い」、「首相的らしくない」と受け止められている。このため、保守党にとってはキャメロン首相を「重要な武器」として戦略を立てている。

➀ ミリバンドの低い評価のために労働党へ投票する人が減るだろうか?
ミリバンドの低い評価が13か月後にどのように変化しているか?

3. UKIPへの支持

英国独立党(UKIP)への世論調査での支持率が大きく上昇してきている。この5月の欧州議会議員選挙、並びに地方議会議員選挙でUKIPが大きな支持を集めると見られている。

その支持が13か月後にどの程度残っているか?

4. 自民党への支持

自民党の支持率がいくつかの世論調査で7%を記録したように非常に低くなっている。しかしながらこの支持率は全国平均であり、自民党の現職下院議員がいる選挙区では自民党はかなり強いと見られている。一方、2011年のスコットランド議会議員選挙では、自民党は得票率が半減し、それまでの17議席から5議席に減ったという事例もある。

自民党の現職がどの程度議席を維持できるか?

5. スコットランド住民投票の結果

918日に行われるスコットランド住民投票の結果、もしスコットランドが独立することとなれば、2015年総選挙にスコットランドの選挙区をどうするかという議論が生じる。独立賛成の場合、スコットランド分権政府は20163月に独立する構えだ。スコットランドでは労働党が強く、保守党の下院議員は1人しかいない。住民投票では独立反対という結果が予測されているが、それが終わるまで不透明な状態が続く。

以上述べたようにまだ不透明な要素がかなりあり、20155月の総選挙を今から予測することは難しいと言える。

支持率:UKIPアップ、保守党&自民党ダウン(Poll:UKIP Up Tory & Lib Dems Down)

最近の政治動向を受け、世論調査の支持率に動きがみられる。特に注目すべきは、連立政権を構成する保守党と自民党の支持率が下がってきていることだ。労働党の支持率はそう大きく変わっていないもののの英国独立党(UKIP)支持率が上昇している。

主な世論調査を見てみよう。これらの調査は下院の総選挙が現在あればどの政党に投票するかで政党支持率を出している。

調査会社 調査実施日 保守党 労働党 自民党 UKIP
ComRes 9-10 29(-3) 35(+0) 7(-2) 20(+4)
Opinium 8-10 30(-2) 36(+3) 7(-3) 18(+3)
Ipsos Mori 5-7 31(-1) 37(+2) 9(-4) 15(+5)
YouGov 10-11 32 38 8 14

以上の世論調査では、いずれもキャメロン首相率いる保守党と労働党との差が6ポイントである。3月の予算発表後、保守党の支持率が上昇し、労働党との差が狭まったが、その差が再び広がってきた。また、自民党はComResが指摘したように、7%は2010年以来最低である。

予算発表の支持率向上効果はそう長続きしないと言われるが、保守党の支持率が下がってきたのは、マリア・ミラー前文化相の議員経費問題とその謝罪の仕方、さらにキャメロン首相の対応の仕方の影響が少なからずある。

一方、自民党の支持率の下降傾向は、その党首ニック・クレッグ副首相のUKIPのナイジェル・ファラージュ党首との英国とEUとの関係をめぐるテレビ討論 (UKIP現象参照)」でファラージュ党首に大きな差で敗れたことと関係がある。テレビ討論直後の世論調査では、この討論の結果、クレッグ副首相への評価も若干上昇したという結果を出したものがあった。このため自民党関係者は、この討論は決して無駄ではなかったと主張したが、テレビ討論の視聴者は限られており、多くの人は新聞などメディアの報道を見て討論の結果を判断する。この討論は明らかに自民党にマイナスに働いたようだ。

さらにミラー前文化相の経費問題に対する下院の倫理基準委員会の手ぬるい対応で2009年の議員経費問題の記憶が多くの有権者に戻ってきた。そのため、既成支配政党に反対するUKIPに支持が流れていることもある。 

これらの動きを受けて、下院総選挙への支持率を見る世論調査ではあるが、UKIPの支持が上昇してきた。保守党と自民党は来年5月の総選挙を心配しているだろうが、1か月後の522日に欧州議会議員選挙がある。保守党が労働党とUKIPの後塵を拝し3位、自民党は前回の2009年に獲得した11議席を大きく失うのは必至の状態だと言える。