英国で急成長する銀行と公務員を弱体化させる評価制度(A Swedish Bank’s Success in UK)

3月初め、あるビジネスマンの書いた手紙への返事が大きな話題となった。マイク・ベンソンが自分のビジネスのためにライトバンを購入したいと思い、ある銀行に、その費用1万7千ポンド(250万円)のうち、1万ポンド(145万円)の融資を求めた。しかし、断られた。英国の銀行の貸し渋りは大きな問題になっているが、エアーコンプレッサーのパーツのビジネスで顧客を世界に持ち、過去15年間利益を上げてきた自分が断られるとは思っていなかった。

腹を立て、その勢いで、英国の中央銀行であるイングランド銀行のマービン・キング総裁に苦情を訴える手紙を書いた。ベンソンの驚いたことに、キング総裁が自分でサインした返事を書いてきた。大手銀行の融資判断は狂っているとベンソンに同情し、あるスウェーデンの銀行にあたってみればとアドバイスした。(参照 http://www.bbc.co.uk/news/business-21630828

このスウェーデンの銀行ハンデルスバンケンは英国で急成長している。現在152支店あり、2週に1店の割合で増えているという(タイムズ紙2013年4月2日)。顧客満足度は他の銀行よりはるかに高いという。

この銀行の特徴は、支店長に非常に大きな裁量権を与えていることである。一定額以上の取引には地区本部の許可が必要(ある支店の例ではその割合は5%)だが、それ以外は金利に至るまでそれぞれの支店長に権限がある。

大手銀行は、2007年に始まった信用危機以降、リスク管理を中央で行い、それぞれのカスタマーの事情を十分に把握せずに一定の基準枠に入れて融資判断を下す傾向があり、それがかなりひどい貸し渋りにつながっているようだ。

この話で感じたのは、大手銀行は中央でのリスク管理のために2つの問題をおこしているのではないかということだ。

一つは、スタッフがそれぞれのシステムに頼る風土を生み、自らの能力を維持、向上する機会を奪い、その結果、組織を弱体化させているのではないかという点だ。もう一つは、第一番目の点と関連するが、かつて優秀なスタッフがそれぞれのカスタマーの潜在可能性を自ら探知していたが、それが失われていき、成功する可能性の高いカスタマーを見逃しているのではないかという点だ。つまり、成功まちがいないと思われるもの(それがどこまで確実かは別の問題だが)にしか手を出さない傾向が出てきているのではないだろうか。

これは、英国の公務員にも当てはまるように感じる。英国の公務員の採用・評価のために政府の取り入れた「コンピテンシー・フレームワーク」も同じで、英国の大手銀行のようになってきているのではないだろうか。つまり、スタッフを類型的に判断し、それでリスクないしはポテンシャルを見る傾向である。その結果、全体のシステムを強くするという当初の意図に反し、実は弱体化させていっているのではないかと思われる点だ。