疑問のあるメイのEU離脱交渉

メイ首相は、これまで繰り返して、イギリスのEUとの離脱交渉の詳細はいちいち明らかにしないと発言している。しかし、EU側が EU単一市場へのアクセスと人の移動の自由は切り離せないと主張する中、メイが移民のコントロールを優先するとし、イギリスがEUからの離脱時に、EUの単一市場へのアクセス、そして金融サービスの「パスポート権」と呼ばれる、域内で自由に活動できる権利を失い、域内への、もしくは域内でのビジネスやイギリス人の活動に、関税、その他の制約がつく可能性が高まっている。そのため、その交渉戦略について議会がより積極的に関与すべきと考える下院議員が多い。

それは、野党だけではなく、メイの保守党もそうだ。デービスBrexit相は、10月10日、それを拒否した。下院の財務委員会の委員長で保守党のアンドリュー・タイリーは、戦略を秘密にするメイの決定は全く受け容れられない、交渉の内容を欧州からの情報漏れで知るようなこととなると警告した。また、同じく保守党で元法務長官のドミニック・グリーブは、交渉を下院に諮問することなく、最終的な合意に下院が賛成しなければ、政府はもたないと指摘した。

保守党の離脱派の下院議員には、メイらは下院を無視して交渉しようとしているが、それは非民主主義的で、憲法に反し、立法府の権限を無視したものだと反発する人がいる。議会の主権を回復するために離脱に投票したのに、EUの専横が、議会の権限を無視する政府に取って代わられただけだとする。

メイの態度は、視野の狭い、厳格な母親が、自分はすべてわかっている、みんなのこと、特に恵まれない人たちのことを考えてうまく采配するから、自分に任せておきなさいと主張するようなものに見える。母親の温かみを感じさせず、政策は押し付けである。既に、選別教育のグラマースクール拡張方針には強い反対を受け、地域が望めばと大幅にトーンダウンした。企業に働いている外国人の数を公表させる政策は、企業から強い反対を受け、公表の必要はないと立場を変えた。離脱の秘密交渉も妥協に迫られる可能性が高いように思われる。