最近の政治動向を受け、世論調査の支持率に動きがみられる。特に注目すべきは、連立政権を構成する保守党と自民党の支持率が下がってきていることだ。労働党の支持率はそう大きく変わっていないもののの英国独立党(UKIP)支持率が上昇している。
主な世論調査を見てみよう。これらの調査は下院の総選挙が現在あればどの政党に投票するかで政党支持率を出している。
調査会社 | 調査実施日 | 保守党 | 労働党 | 自民党 | UKIP |
ComRes | ㋃9-10日 | 29(-3) | 35(+0) | 7(-2) | 20(+4) |
Opinium | ㋃8-10日 | 30(-2) | 36(+3) | 7(-3) | 18(+3) |
Ipsos Mori | ㋃5-7日 | 31(-1) | 37(+2) | 9(-4) | 15(+5) |
YouGov | ㋃10-11日 | 32 | 38 | 8 | 14 |
以上の世論調査では、いずれもキャメロン首相率いる保守党と労働党との差が6ポイントである。3月の予算発表後、保守党の支持率が上昇し、労働党との差が狭まったが、その差が再び広がってきた。また、自民党はComResが指摘したように、7%は2010年以来最低である。
予算発表の支持率向上効果はそう長続きしないと言われるが、保守党の支持率が下がってきたのは、マリア・ミラー前文化相の議員経費問題とその謝罪の仕方、さらにキャメロン首相の対応の仕方の影響が少なからずある。
一方、自民党の支持率の下降傾向は、その党首ニック・クレッグ副首相のUKIPのナイジェル・ファラージュ党首との「英国とEUとの関係をめぐるテレビ討論 (UKIP現象参照)」でファラージュ党首に大きな差で敗れたことと関係がある。テレビ討論直後の世論調査では、この討論の結果、クレッグ副首相への評価も若干上昇したという結果を出したものがあった。このため自民党関係者は、この討論は決して無駄ではなかったと主張したが、テレビ討論の視聴者は限られており、多くの人は新聞などメディアの報道を見て討論の結果を判断する。この討論は明らかに自民党にマイナスに働いたようだ。
さらにミラー前文化相の経費問題に対する下院の倫理基準委員会の手ぬるい対応で2009年の議員経費問題の記憶が多くの有権者に戻ってきた。そのため、既成支配政党に反対するUKIPに支持が流れていることもある。
これらの動きを受けて、下院総選挙への支持率を見る世論調査ではあるが、UKIPの支持が上昇してきた。保守党と自民党は来年5月の総選挙を心配しているだろうが、1か月後の5月22日に欧州議会議員選挙がある。保守党が労働党とUKIPの後塵を拝し3位、自民党は前回の2009年に獲得した11議席を大きく失うのは必至の状態だと言える。