7月29日に3人の少女が刺殺され、大人2人を含む10人が刺されて大けがをした。容疑者は、両親がウガンダから英国に来た後、英国で生まれた17歳の男(現在は18歳)だった。その容疑者を英国にボートで渡ってきたイスラム教徒の不法移民とする偽情報がソーシャルメディアで広まった。極右が、反移民のキャンペーンにこの事件を使い、亡くなった3人の少女を悼む7月30日の会に大勢で集まり、近所のイスラム教寺院を攻撃し、暴動を起こした。それが現在の暴動騒ぎの発端である。
スターマー政権は、警察の体制を整え、情報収集と分析に力を入れ、警察全体が一丸となって対応するよう指示した。必要なところに暴動対策警官を配置し、徹底した取り締まりを行い、現行犯で逮捕するとともに、CCTV,ソーシャルメディア、警察官のボディカメラ、ドローン映像、各種メディアの映像などを分析し、容疑者を割り出し、逮捕していっている。その上、現場にいなくても、ソーシャルメディアなどで暴動を煽った者も暴動に関わったものと同じだとしてその逮捕も進めている。
8月8日には、逮捕の件数が500を超え、140件あまりが起訴されているとされる。また、同日には21人が判決を受けたようだ。スターマー首相が、暴動を起こした者の量刑は、「法律の総出力」を感じさせるものにすると宣言したが、非常に重い。これまでのところ、言い渡された最長の刑期は3年だが、中にはテロリズム法に触れる事案もあるとされ、10年に及ぶ刑期の可能性もある。さらに、法廷での判決もテレビで報道されており、名前を明らかにし、顔写真も公表している。
極右は今でも集まりを呼びかけているが、プロテストとして集まっても、暴動を起こす可能性は非常に小さくなってきている。
一方、8月7日には、「極右の反移民などのプロテスト」に反対する勢力が集まって、極右の集まりを圧倒する例がいくつもあった。極右とそれに反対する勢力がにらみ合い、もみ合いをし、警察が間に入るということもあった。極右側が警察の後ろに隠れ、警察に助けを求めるような場面もあったようだ。
警察は、反極右のプロテストに神経質になっているとされる。確かに、人の数が多くなれば、それだけ対応する人や場面が多くなり、問題も出るだろう。
また、反極右の労働党の地方議員が、極右らの首を掻き切って片づけるべきだという発言をした。この地方議員は、逮捕された。警察の極右の取り扱いとそれ以外の者の扱い方が異なると攻撃されており、検察は、この地方議員にかなり思い禁固刑を求めるのは間違いないだろう。
スターマー首相は、現在の体制を緩めることなく当面維持していくとされる。徹底取り締まりのペースはこれからしばらく続くだろう。一方、ソーシャルメディア各社には、同じようなことが起きないよう対応を求めた。実際にオンラインセイフティ法(2023)で、規制当局がソーシャルメディア会社に命じることができるようになるのは、2025年に入ってからになるが、現在でも同じことはできるとする。同じことが再び起きないよう、スラーマー政権がさらに強く求めていくのは明らかである。