2010年以来、5人の首相が保守党政権で誕生し、去って行った。その後を担ったのは労働党のスターマー首相である。スターマーは、「国が第一、党は二番目」という。この点で、保守党の5人の元首相たちは、どうだったのだろうか?
1.キャメロン
小さな国を目指し、財政緊縮策を実施した。財政緊縮策はそれからも継続し、現在の公共サービスの大きな問題につながっている。しかし、キャメロンの最大の問題は、2016年のEU離脱の国民投票であろう。
キャメロンは、自分の政策運営の邪魔をしていた、保守党内のEU離脱を求める欧州懐疑派を抑えるために国民投票を実施した。国民が離脱に賛成するとは思っていなかったからだ。しかし、国民は離脱に賛成し、キャメロンは即座に辞任。英国は今もその悪影響を受けている。
2、メイ
メイは、キャメロンの後を受けて、EUと交渉し、英国のEU離脱を成し遂げることがその役割だった。しかし、もともとEU残留派だったこともあり、自分の業績になるものを何か成し遂げたかったのだろう。高い支持率を背景に、突然、総選挙を実施することにし、当時固定任期制だったが、労働党も賛成したため、総選挙が行われた。保守党の議席を増やすことが第一の目的だったが、その選挙で、介護に関する終生の負担を大きく増やす政策を示唆したため、勢いが急に衰え、議席を減らす結果となった。そのため、結局、EU離脱を成し遂げることができないまま首相を追い落とされた。
3. ジョンソン
ジョンソンは、そのEU離脱策が行き詰まり、総選挙に打って出た。EU離脱を成し遂げると訴えて総選挙に勝ち、EU交渉を終え、離脱を成し遂げた。ところが、性格的にいい加減な面があり、さらに友人を重んじるあまり、議会の行動規準委員会の判断を覆そうとした。さらにコロナに関連したパーティゲートで罰金刑を受けるに至り、結局、閣僚などの信任を失い、辞任した。
4. トラス
サッチャーに憧れ、自由主義経済と財源を明言しない大幅減税を主張し、それに意見する財務省の事務次官を解任。そのため、信用不安を招き、中央銀行の介入を必要とする事態となり、わずか49日で辞任した。
5. スナク
ジョンソンのお陰で財相になったが、インド系で初めての首相になるチャンスを見逃すことができなかった。同じインド系だがパキスタン系のジャビドがジョンソン内閣を辞任するのと同時に財相を辞任し、ジョンソン政権が瓦解するきっかけを作った。次期党首選に打ってでて、トラスに敗れたもののトラス政権がすぐに倒れ、その後の保守党党首・首相に選出された。ただし、その党首・首相選終盤で、大臣規範違反でトラスに内相を更迭されたブラバメンと取引し、ブラバメンを再び内相に任じるかわりにそのグループの支持を獲たと見られている。ブラバメンは内相についたが、結局、スナクが再び更迭する。
7月4日の総選挙の選挙戦では、根拠の乏しい主張を繰り返して労働党とスターマーを攻撃した。
例え、労働党政権とスターマー首相は国のためにならないと信じていたとしても過剰で、スナクの人格が疑われるものだった。
いずれの保守党首相も、国が第一と考えていたとは思われない。スターマー首相がその言葉通りにできるかどうか注目される。