7月4日の総選挙で大勝利を収めた労働党のスターマー政権は、政権誕生後100日余りだが、その人気は大きく下降している。政権100日を前に10月11日に発表された世論調査では、スターマー政権は「よくやっていない」とする率が大きく増えており、YouGovは、「よくやっていない」とするのは有権者の59%だとする。Ipsosも同じような傾向を示している。
10月6日にスターマー首相の首席補佐官だったスー・グレイが辞任した。スターマー首相が服やメガネを百万長者の労働党のアリ上院議員から買ってもらっていたことや、本人のサポートしているサッカーチームのアースナルの試合を見るためにディレクター席に無料で座らせてもらっていること、さらにテイラー・スウィフトのウェンブリー公演の券を「ただでもら」っていたことなどが明らかになり、スターマー首相への批判が高まった。さらに政権発足後、夏の暴動問題には迅速な対応で急速に終焉させたものの、目立った政権の活動がなく、政権運営に政権の内外からの批判が高まった。これらがグレイの辞任につながった。
後任の首相首席補佐官に選挙戦略担当のモーガン・マクスウェニーが就き、広報部門を強化した。それまでキャリア国家公務員だったグレイがスターマー政権の要となっていたが、内外ともにグレイが突出するこの体制は異例で、「よくやっていない」評価の批判が、グレイに集まった格好だ。実際、14年間続いた保守党政権から多くの負の遺産を受け継いだスターマー労働党政権の課題は多く、急にすべての問題の解決策が出せるわけではなく、最初から「いばらの道」であることは誰もが理解していたが、当初の立ち上げに目を見張る成果が出ておらず、グレイがその責任をとった形だ。
スターマー政権のレイチェル・リーブズ財相の予算発表が10月30日に行われるが、この発表がもっと早く行われるべきだったという批判が出た。グレイ辞任後、ブレア労働党政権の広報局長だったアラスター・キャンベルも他の政権の例を挙げてほとんど4か月間近く予算を発表しないのは失敗だったとした。しかし、インフレは落ち着いてきたものの、財政の非常に厳しい中、予断は禁物で、今後の経済成長や、賃金、年金の見通しなどを見極める必要があり、時間をかけるのには理由がある。特にスターマー政権では大臣経験者が少なく、新しい立場に慣れ、財相と予算の交渉がきちんとできるまでにはかなり時間がかかる。さらに予算発表では、独立機関である予算責任局(OBR)の評価も受けて、同時に発表する必要があり、結局、10月30日の予算発表予定は、妥当だったように思われる。
ただし、リーブズ財相の予算発表がどのように受け止められ、スターマー政権の評価が向上するかどうかは別の問題のように思われる。