メイ政権のブレクジットに関する発言は次第に変化してきたが、イギリスのEU離脱交渉では、現在、以下のような点を重んじてきている。
- EUの単一市場と関税同盟を離脱する
- EUとの経済貿易関係にできるだけ摩擦のないようにする
- 他の国と独自に貿易関係を結ぶことができるようにする
- EUとイギリスとの地上国境となるアイルランドの国境には検問などのチェックポイントを設けない
これらを同時に解決するのは極めて困難だ。確かにEUを離脱しても、EUの単一市場や関税同盟に残り、EUと摩擦のない関係を維持することは可能だ。しかし、それでは、EU外の国と独自に貿易関係を結ぶことはできない。メイ首相は、その政権を維持しながら、この交渉をまとめるために様々な要求を満足させる方策を考え出そうとしている。大きな問題は時間がなくなっていることだ。10ヶ月後には、イギリスはEUを離脱するのである。
そのため、ビジネスも公共セクターも10か月後をにらんで動き始めている。イギリス経済は、既に投資を控える動きなどから成長が鈍化しており、過去12ヶ月、アメリカが2.2%、ユーロ圏が2.5%成長したのに対し、イギリスは1.2%だった。5月末、欧州のトップ50企業の代表がメイ首相に事実上EUの関税同盟に残るよう訴え、また、イギリスのバークレイズ銀行は、国内の投資への貸し出しに関する条件を厳しくしている。
その一方、北アイルランド警察に関しては、その警察官の組織が、現在の警官数では、国境を警備しかねると訴えた。現在の警官数は6621人だが、かつては、警官13500人と軍人26000人で国境と治安を守っていた。しかし、北アイルランドでは、反政府過激分子が新しく設けられる可能性の高まっている検問所などを攻撃する可能性は否定できないとして、財政削減で計画されている警察署閉鎖を中止し、警官を増強するよう訴えた。
このような動きはさらに強まっていくだろう。