ナイジェル・ファラージュの政界再登場

英国のEU離脱の大きなきっかけを作ったイギリス独立党(UKIP)の元党首ナイジェル・ファラージュが、UKIPの後身であるリフォーム党の党首となり、7月4日の総選挙で、英国南東のクラックトン(Clacton)選挙区から立候補することを2024年6月3日表明した。

クラックトン選挙区では、2015年総選挙で、UKIPから立候補した元保守党下院議員ダグラス・カースウェルが当選したことがある。ファラージュには、リフォーム党の名誉会長の肩書があったが、これまで今回の総選挙には直接かかわらないとの立場を明らかにしていた。ファラージュの態度豹変は、明らかに、クラックトンで自分が当選し、また、他の選挙区でも勝つ可能性を見出した結果だと思われる。

6月3日には、YouGovの総選挙議席予測が発表された。YouGovは、2017年総選挙で新しいMRP予測を導入し、選挙結果に非常に近い結果を出した。今回の予測では、労働党が全650議席のうち、422議席を獲得し、一方、保守党は140議席にとどまるという結果だ。なお、650議席はすべて小選挙区制で、それぞれの選挙区で最も多くの票を獲得した候補者が当選する。

政党名2019年獲得議席2024年予測増減
労働党202422+220
保守党365140-225
自民党1148+37
SNP4817-31

もしYouGovの予測通りの結果が出れば、労働党にとっては、史上最大の総選挙勝利となり、1997年のトニー・ブレアの地滑り的大勝利を上回る結果となる。一方、保守党にとっては、1906年以来、最低の選挙結果で、壊滅的な選挙結果となる。

ファラージュは、これまで総選挙に7回出馬していずれも敗退している。しかし、保守党への支持が大きく減少している中、8回目(七転び八起き)にして下院議員になり、英国政治に影響を与えることを考えているのだろう。

選挙の大きな争点の一つである移民の問題では、保守党は、労働党の具体的な数字目標を挙げない政策を攻撃しているが、保守党は、リフォーム党の移民ゼロの政策と比較されることとなる。ファラージュへのメディアの関心は高く、6月3日の記者会見は、ニュース速報で取り上げられた。このような関心は、選挙戦期間中維持されると思われ、保守党にとっては、右(リフォーム党)と左(労働党)の両方に挟まれ、さらに厳しい情勢となる。