3月11日の首相のクエスチョンタイムは、イギリス政治の醜い面が典型的に出た。野党労働党のミリバンド党首が質問に立ち、5月7日の総選挙前の、ミリバンドとの一騎打ちの党首テレビ討論に参加しない意思を表明しているキャメロン首相をなじり、「怖気づいている(チキン・アウト)」と攻撃した。労働党議員の中に、「弱虫」を意味する鶏(チキン)の鳴き声の物マネをする人もいた。
これに対し、キャメロン首相は、スコットランド国民党SNPとの連携を否定しないミリバンド党首を「弱い」、「卑劣」だと主張した。お互いの人格攻撃だった。いずれの側からも大きなヤジが飛びかい、何を言っているか聞こえないほどだが、キャメロン首相もミリバンド党首も、どっちもどっちだ。キャメロンは、選挙に勝ち、始めた仕事を終わらせたい、国の誇りを取り戻したいと言うが、このような発言をして、国民に「誇り」を持たせるようなことができるとは思われない。
これらの発言は、保守党も労働党側も、選挙に向けての効果を考えた上のことだろう。しかし、イギリスの下院議員は、もう少しましだろうと思う人がいれば、それは誤りである。イギリスの下院議員には、ヤジ将軍のような人物が何人もおり、しかも、院内総務が指示を出して、ヤジらせている場合も多い。
しかもヤジだけではない。女性差別的な行動・ジェスチャーをする人も少なからずいる。労働党の「影の下院のリーダー」は女性だが、労働党が政権につけば、下院での発言のルールを厳しくして、議長が処分しやすくすると言う。
女性差別だけではなく、「弱い者いじめ」を下院でする人もいる。自民党の下院議員は、発言しようとして立ちあがるたびに、からかいのヤジを受けた。また、他の党の議員の発言が気にいらない場合、「看護婦」と叫ぶ議員もいる。これは、精神異常者がいるので、処置が必要だという意味である。
このような行動に対して、議員たちは、長い議論に退屈し、それを発散しているのに過ぎないという声もある。しかし、これらの態度は、下院議員が公職についている者であるというよりも、一種の与太者的な印象を受ける。
キャメロン首相の側近で、教育相だった、現院内総務のマイケル・ゴブのヤジは有名で、議長から何度も叱責された。ゴブは、保守党の同僚からは、信念のある政治家で、非常に礼儀正しい人物と考えられている。しかし、同時に、議長に叱責されているのを見ると、公職についていることを忘れているように見える。
このような行動は、ゴブも学んだオックスフォード大学のカレッジの男子学生の騒々しい雰囲気などに助長された面もあるかもしれない。もしそうならば、そのような態度事態、改める必要があろう。
いずれにしても、このような行動を許しているイギリス議会には、幻滅という言葉以外何もない。