なぜ世論調査会社は選挙結果を予想できなかったのか?

今回の総選挙は、いずれの政党も過半数を占めることのない、いわゆるハングパーリメント(宙づり議会)となると見られていたが、保守党が過半数を占める、意外な結果となった。

650議席の内訳

保守党 労働党 自民党 UKIP SNP その他
2010年総選挙結果 306 258 57 0 6 23
2015年総選挙結果 331 232 8 1 56 22
25 ‐26 -49 2 50

なぜこのような結果となったかの検証が始まっているが、保守党の選挙戦略担当者でも、過半数を獲得するとは見ていなかったことが明らかになっている。アメリカのオバマ選対で活躍し、保守党のマージナル選挙区対策で大きな役割を果たしたジム・メッシーナは、投票日1週間前には305議席と呼んでいたそうだ。投票日の朝、保守党の議席数は312と読んでおり、それを選挙対策の責任者であるリントン・クロスビーに提出したという。結果は、それよりもかなり上回り、過半数を超えた。

マージナル選挙区とは、前回の2010年の総選挙で、当選者と次点の票の差が少ない選挙区のことを言い、各政党とも通常、マージナル選挙区で勝てるかどうかを重視する。これは、小選挙区制度の選挙では、基本と言える。今回の選挙結果で驚くべきことは、保守党がマージナル選挙区のほとんどを制したことだ。

メッシーナは、マージナル選挙区の、どの政党に投票するかまだ決めていない人、自民党支持だったが、他の党に投票を変えたい人、労働党より保守党に投票する可能性のある有権者など、細かく特定し、そのターゲットに集中してソーシャルメディア、電話、訪問などの手段で働きかけたという。最後の週には、まだどの党に投票するか決めていない人と8から10回言葉を交わしたそうだ。恐らく、ここに世論調査会社が選挙結果を読めなかった一つの原因があるように思われる。世論調査会社は、全体の傾向を見る。今回の総選挙では、元保守党副幹事長だったアッシュクロフト卿などが、選挙区ごとの世論調査も実施したが、選挙区でも広い有権者層の支持動向を探るため、これらのマイクロターゲットの対象の有権者の投票動向の変化を捉えることは極めて難しい。

次期総選挙では、他の政党も同じことを仕掛けてくることを考えれば、世論調査会社の仕事は、さらに難しくなる可能性があろう。