保守党の将来

2024年7月4日の総選挙で、歴史的な大敗を喫した保守党。チャーチルやサッチャーなど世界的に、また歴史的に有名な政治家を生んだ政党だが、これからどうなるのだろうか。

2024年7月4日総選挙結果

政党名2019総選挙議席数2024総選挙議席数2024年得票率%
労働党20141233.7
保守党37212123.7
自民党87212.2
SNP4892.5
リフォーム党0514.3
緑の党146.7
(主な全国政党のみ。スコットランド国民党SNPは地域政党だが、2019年総選挙では、スコットランドで48議席を獲得したのでこの表に含めている。緑の党は、スコットランド、北アイルランド、それにイングランド&ウェールズの別々の3党の合計)

大敗北を喫した保守党は、党首のスナク前首相が党首を辞任したが、後継の党首が決まるまで党首を継続するとした。しかし、総選挙直後の混乱のため、次期党首選の方針を決めるまでに時間がかかった。党首選の段取りは以下の通り

  • 立候補するには、本人以外の10人の保守党議員の推薦が必要。ただし、党紀を担当する院内幹事と、党首選を実施する1922委員会の役員は推選できない。
  • 立候補推薦は、7月24日に開始され、7月29日に締め切られる。
  • 9月に下院が再開してから、保守党内で下院議員が投票し、最少得票者が1人ずつ除外され、4人までに絞り込む。
  • 9月29日から10月2日まで開催される保守党大会で、2人に絞り込む。
  • 2人に絞り込まれた2人のうちから、党員がオンラインで投票し、その投票は10月31日に締め切られる。
  • 11月2日に新党首が発表される。

ただし、保守党の問題は、党首を選んだだけでは片付かない。特にその偏った支持層の問題は、極めて大きい。

年齢別の有権者で、誰がどの党に投票したかを見れば、その問題は、一目瞭然だ。世論調査会社YouGovが有権者35000人余りの分析をしている。

18歳から24歳

政党労働党自民党緑の党その他リフォームUK保守党
支持割合%411618898

70歳以上

政党労働党自民党緑の党その他リフォームUK保守党
支持割合%2011351546

下院の任期は5年で、それまでに解散があった場合には、5年以下になるが、仮に5年に一度総選挙が行われた場合、保守党が政権を再び担当できる可能性は5年先、10年先になる可能性がある。現在、保守党への若い層の支持は、リフォームUK党をも下回っている。一方、高齢者層の支持は高くても、将来その層からの支持はあまり期待できなくなる可能性が高い。すなわち保守党の立て直しには、根本的な対策が必要とされている。

そのような対策を提供できる新党首が選べるかどうかが、当面の保守党のカギとなるだろう。

労働党の地滑り的大勝利

2024年7月4日に行われた英国総選挙で、労働党が地滑り的な大勝利を収めた。7月5日午前9時現在、労働党は、英国下院(庶民院)の全650議席のうち、411議席を獲得している。前回2019年総選挙では202議席だった。一方、これまで政権を14年間担当してきた保守党は、119議席で、歴史的大敗である。前回の365議席から大きく後退した。なお、3番目に多くの議席を獲得したのは自民党で、前回の11議席から71議席となった。なお、これまで第3党だった、スコットランドのSNP(スコットランド国民党)は、9議席と39議席減らした。

この結果、野党第一党は保守党で、水曜日恒例の下院の「首相への質問」では、保守党が6つの質問、第3党の自民党は、2つの質問ができることになる。

7月5日の予定は、午前10時半にスナク首相が首相官邸前で簡単なスピーチを行い、バッキンガム宮殿でチャールズ国王に謁見する。首相を辞職し、同時に次期首相に労働党のスターマー党首を推薦する。その後、スターマーがバッキンガム宮殿に招かれてチャールズ国王に謁見し、首相に任命され、組閣を命じられる。スターマーは、午後12時20分頃、首相官邸前で首相として初めてのスピーチを行い、直ちに組閣に入る。組閣は、7月5日中に終える予定である。

スターマー政権は、新政権の課題に直ちに取り組むとして、7月6日に初閣議を行い、仕事を開始していくこととなる。総選挙が終わった後、ゆっくりと休む暇もない。スナクとその家族は、首相官邸内の住居を直ちに明け渡し、スターマーとその家族がすぐに入居できることとなる。

今回の総選挙で、労働党は、約34%の得票をし、地滑り的大勝利を勝ち取った。ただし、総選挙での労働党の得票率では、2017年総選挙で40%の得票をし、262議席を獲得して敗北した場合と比べると状況がかなり異なっている。

今回の結果は、労働党が勝ち取ったというよりも、保守党(英国全体の政権)やSNP(スコットランド分権政府の政権)が不祥事や失政で大きく議席を減らしたことが大きな原因である。保守党の支持率の大きな低下で、右のリフォームUK党が大きく票を伸ばして4議席獲得したが、さらに各選挙区でリフォームUK党が保守党票を大きく奪った。その上、弱体化した保守党の票を、従来保守党の獲得した議席で次点だった自民党が、保守党票並びに、保守党を敗北させるためのタクティカルボーティングで労働党票も引寄せた。 得票率は低いにもかかわらず、地滑り的大勝を勝ち取った労働党にとっては、結果がすべてである。労働党は、今回の総選挙で安全第一の選挙戦を展開した。その点で、労働党の選挙戦略は大成功だったと言える。