スコットランド独立投票まであと一年(One year to Scottish Referendum)

独立に関するスコットランドの住民投票がちょうど一年後の来年9月18日に行われる。スコットランドは英国の一部であるが、スコットランドには反イングランド感情が伝統的にある。英国からの独立を掲げて1934年に設立されたスコットランド独立党(SNP)が現在スコットランド議会の過半数を占めており、キャメロン首相らと交渉の結果、この住民投票を実施することとなった。

ちょうど一年前となったため、幾つかのメディアがそれに関する世論調査を実施しているが、独立反対が20から30ポイントほど多い。例えば、以下のようなだ。

タイムズ/YouGov 独立賛成32%、反対52%
デイリーメイル/Progressive Scottish Opinion 独立賛成27%、反対59%

これまでも多くの世論調査が行われているが、世論調査のほとんどはこのような割合の結果となっており、来年の住民投票で、独立への賛成票が多数を占める可能性は乏しい。

特に最近大きな争点となっているのは、もし、スコットランドが独立することとなると解決しなければならない問題である。

例えば、独立したスコットランドの通貨である。まずはポンドを使い続けるにしても独自の通貨を導入するかどうか。軍隊をどうするか、EUとの関係をどうするかなどもある。また、巨額に上る英国の国の債務の一定割合分を負担することになるが、独立したばかりのスコットランドは英国のような信用力がなく、支払う利子が高くなるなどすぐには解決できない問題が多い(参照)。

むしろ、現在のスコットランド政府の権限をさらに拡大すべきだという見解が多い。

スコットランドの独立の可能性が高まるのは、英国がEU離脱/継続の国民投票の結果、EUを離脱した場合だろう。その場合には、スコットランドが英国から独立した方がよいという意見が高まるかもしれない。

SNPは、今回の住民投票は党の設立趣旨に適うことから強気の姿勢を崩していないが、SNPにとっては、スコットランド独立の準備が十分できているとは言えず、独立反対の結果はそう悪いものではないように思われる。むしろ、できるだけ多くの独立賛成票を獲得し、その結果、スコットランド議会の権限を大幅に拡大する狙いがその背後にあるように思われる

スコットランド独立住民投票の行方(Scottish Independence Referendum)

スコットランドの、英国からの独立に関する住民投票が2014年9月18日に行われるが、最近の世論調査によると、スコットランドの独立に賛成する人の割合が減少している。

Ipsos Moriの世論調査(http://www.ipsos-mori.com/newsevents/ca/1389/Why-it-is-hard-to-see-much-hope-for-Salmond-and-his-political-dream.aspx)では、現時点でどう投票するか決めている人のうち、3分の2が独立に反対している。

確実に投票するという人が減っている中、反対する人と賛成する人の差が大きく、しかもその差が次第に大きくなっている状態では、これを覆すことは極めて困難になってきている。

この住民投票では16歳から投票ができる。これは、スコットランドの政権を預かるスコットランド国民党(SNP)の戦略の一環で、ウェストミンスターのキャメロン政権が認めた。上記の世論調査で見ると、確かに18歳から24歳の若者の半分がスコットランドの独立を支持しているが、この層は投票率が低い。一方、55歳以上の人で独立に賛成する人は、27%に過ぎない。

英国では55歳以上の人はグレイ・ボート(Grey Votes)と呼ばれるが、この年代の人は、若者世代より人口で2倍多く、しかも投票に行く割合は2倍あり、その結果、この年代の支持・不支持は若者層より、4倍の効果があるといわれる。

もしスコットランドが英国から独立すれば、公的ならびに民間の年金にかなり深刻な問題があることが4月に表面化した(http://www.bbc.co.uk/news/uk-scotland-scotland-politics-22296547)ことを考え合わせると、スコットランドの独立に関するスコットランド住民の投票では、SNPの望む結果が出る可能性は極めて少ないといえる。