Business Champion for Older Workersの任命

政府は、中高齢者の雇用と働き続けることを促進するために「中高齢ワーカーのビジネス支援者(Business Champion for Older Workers)」を任命した。 

イギリスでは、55歳から64歳の雇用が増えており、65歳以上で働いている人の数が記録的な水準となっているそうだ。それでも、ビジネスにもこれらの年齢の人たちにも、これまでの古いタイプの考え方がかなり根強く残っており、これを変えていくことが必要であると判断しているからである。

現在では、50代、60代、さらに70代でも老いたとは考えない人が多くなっている。そういう中、定年制は時代遅れとなった。

これらの世代の人たちの勤労能力を軽視することは、それぞれの人の技能、経験、勤労倫理その他、社会にプラスになる要素を無視することとなる。もちろん雇用条件や働く職種によって様々な制限はあるかもしれない。しかし、これらはフレキシブル・ワーキングを導入することや継続的なトレーニングを行うことでカバーできる余地が大きい。

もちろん、誰もが長く働くよう強制されることを意味するのではない。これはそれぞれの個人の選択の問題である。むしろそれぞれに力を与え、働くことを可能にさせる条件を作ることであるといえる。

医療費、ケア費用が大幅に増加する中、年金受給額がこれから減ることが予想され、しかも移民に頼る経済体質から抜け出すには、雇用の場に中高齢者を取り戻すことは極めて重要である。また、NIESRによると、もし誰もが1年余分に働けば、GDP1%アップするという(2013年で160億ポンド(約28千億円))。

イギリスでは、フレキシブル・ワーキングをすべてのワーカーに広げた。また国の年金支給年齢は徐々に引き上げられており、定年年齢はなくなった。しかし、まだまだ十分なものではない。

今でも50歳から国の年金受給年齢までの人で職に就いていない人が290万人おり、この年齢層の雇用率は60%である。これを上げる必要がある。さらに今後10年間で、16歳から49歳までの人が70万人少なくなるのに対し、50歳以上の人は370万人多くなる。これらを考えれば、中高齢者の雇用、活用は政府にとって急務とも言える。

事務次官と大臣の関係

公務員関係の問題を担当する内閣府大臣フランシス・モードが、事務次官と大臣の関係についてタイムズ紙(2014712日)に投稿した。過去数日、事務次官は大臣に立ち向かえる人物であるべきという任用ガイダンスに対してモードが激怒したということが報じられていた。それへのモードの反応である。

モードは、大臣の役割は公務員から最高の助言を受けて政策を決定することであり、それを実施するのが公務員であるとする。しかし、もしその決定に公務員が同意できないなら、それをはっきりと言うべきであり、その決定にいつ従うか勝手に決めるべきではないという。

そしてもし、大臣の決定に重大な誤りがあると思われる場合には、大臣に指示書を書くよう求めるべきだと言った。これは稀にしか使われていないが。

モードの議論は正しいと思われる。大臣の求める政策の実現可能性が低い場合や、多くの弊害をもたらす場合、さらには費用対効果の面で著しい問題のある場合などには、はっきりとその旨を大臣に伝えるべきである。もし、それでも大臣が考えを変えない場合、指示書を求めるべきだろう。 

このような指示書はWritten Ministerial Directionsと呼ばれる。2010年総選挙前の労働党政権下では2009年に9件、2010年に5件あったといわれ、総選挙前にブラウン労働党政権が事務次官の反対を押し切ってかなり強引に特定の政策を選挙目的で使ったようだ。1997年から20134月までに37であり、平均して年に2件余りである。

この指示書が出されると、その写しが会計検査院院長に送られ、そこから公会計委員会、そして議会と送られることとなる。そう頻繁にあるものではないが、省庁の内部だけに留まらず、きちんとした手続きが取られる。 

このような指示書を求めるのは、会計責任者の事務次官が、その責任を取れないとする場合だが、最後の手段ともいえ、大臣側も事務次官側もそこまで至りたくないという場合が多い。それでも責任をはっきりとさせるには有効だと思われる。