経済成長の鍵の一つは都市の成長

スターマー首相は、Natoのサミットでアメリカに行く前に、英国のイングランドの地域(バーミンガムを含むウェストミッドランズなど広域都市連合)12の市長と会った。これは、地域への分権とそれぞれの独創的な取組みが全体の経済成長の鍵の一つになるとの考えに基づく。それぞれの優先セクターとそれに必要なインフラ整備を報告するよう求めたという。また、同様な地域をさらに広めて行くとの話があったそうだ。なお、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドには分権政府がある。

このミーティングは明らかにスターマー労働党が、これまでに慎重に計画してきたものであり、スターマー首相の準備ぶりがよく現れている。

特に、12の都市のうち、11は労働党の市長であり、保守党の市長は1人だけだが、スターマー首相は他の市長を含めて会う前に、15分間保守党の市長と会う機会を作った。保守党市長でも、ハンデはないというような話があったものと思われる。

地域への分権は、保守党政権下でも推進された。しかし、ジョンソン政権のレベルアップ策に見られるようにあまり効果があがっていないものが多い。それらをさらに大規模に、統合的に行えば一定の効果があるものと思われる。

スターマー労働党では、課題に対する対策案を既に検討しており、それらを次から次に出して行く手法は斬新といえる。

スターマー首相の若手人事

7月5日に首相となったばかりのスターマー首相は、7月9日にNATOの会議に参加するため、アメリカに飛び立った。その前にスターマー政権の準閣僚以下の人事に手を入れた。

新しく下院議員になった人も5人含まれている。旧態依然の政治のルールやシステムを変えて行くため、また近年のテクノロジーの急激な進展を考えると新しい人を段階的に入れて行くのは意味があるだろう。

さらに保守党のスナク前首相は下院議員になってから7年半で首相となり、スターマー首相は9年で首相となった。有望だと思われる人には早くから機会を与えていくのは理屈にかなう。

新人の任用で、最も注目されるのは、38歳のジョージア・グールドである。任命されたポストは、政府全体をまとめる立場の内閣府の準大臣職の一つで、省庁を超えて政策を実施していく立場である。2017年からロンドンのカムデン区の自治体のリーダー(当該地方議会の最大会派のリーダーで区長職相当の役割を担う)を努めてきた。また、ロンドンの区全体の会の委員長でもあり、有能な人材であるのは間違いなさそうだ。

スターマー政権が始まり、スタートダッシュで、次々に新しい方針が発表されている。新しい人材がどの程度スターマー政権の目標達成に貢献できるか注目される。