事務次官と大臣の関係

公務員関係の問題を担当する内閣府大臣フランシス・モードが、事務次官と大臣の関係についてタイムズ紙(2014712日)に投稿した。過去数日、事務次官は大臣に立ち向かえる人物であるべきという任用ガイダンスに対してモードが激怒したということが報じられていた。それへのモードの反応である。

モードは、大臣の役割は公務員から最高の助言を受けて政策を決定することであり、それを実施するのが公務員であるとする。しかし、もしその決定に公務員が同意できないなら、それをはっきりと言うべきであり、その決定にいつ従うか勝手に決めるべきではないという。

そしてもし、大臣の決定に重大な誤りがあると思われる場合には、大臣に指示書を書くよう求めるべきだと言った。これは稀にしか使われていないが。

モードの議論は正しいと思われる。大臣の求める政策の実現可能性が低い場合や、多くの弊害をもたらす場合、さらには費用対効果の面で著しい問題のある場合などには、はっきりとその旨を大臣に伝えるべきである。もし、それでも大臣が考えを変えない場合、指示書を求めるべきだろう。 

このような指示書はWritten Ministerial Directionsと呼ばれる。2010年総選挙前の労働党政権下では2009年に9件、2010年に5件あったといわれ、総選挙前にブラウン労働党政権が事務次官の反対を押し切ってかなり強引に特定の政策を選挙目的で使ったようだ。1997年から20134月までに37であり、平均して年に2件余りである。

この指示書が出されると、その写しが会計検査院院長に送られ、そこから公会計委員会、そして議会と送られることとなる。そう頻繁にあるものではないが、省庁の内部だけに留まらず、きちんとした手続きが取られる。 

このような指示書を求めるのは、会計責任者の事務次官が、その責任を取れないとする場合だが、最後の手段ともいえ、大臣側も事務次官側もそこまで至りたくないという場合が多い。それでも責任をはっきりとさせるには有効だと思われる。

労働組合のストライキの制限を計画する保守党

710日、全国で公共セクターの組合による大規模なストライキが行われた。賃金の問題が中心で、国家公務員、地方公務員や教員、消防士などが加わった。組合側は参加者は100万人を超えたというが、政府はその半分以下だという。いずれにしてもかなりの規模のストライキであった。

キャメロン首相は、このストライキを批判し、来年2015年に予定されている総選挙のマニフェストで、ストライキ投票に最低投票率を設けることを約束すると発表した。

現在の制度では、投票率が低くても賛成多数でストライキを実施できる。特に今回の教員組合(NUT)のストライキは、2012年に行われた投票に基づいており、その際の投票率は27%であった。つまり、かなり前に実施され、わずか4分の1の組合員しか投票しなかったものに今も縛られているのはおかしいという主張である。

なお、保守党にはこの制限を投票率50%にすべきだという意見がある。

このストライキでは、政府が公共セクターで働く人たちの給与を抑制していることが争点だった。2010年にキャメロン政権が誕生し、賃金を凍結した。2012年に年1%アップまでとしたが、この間、物価はそれよりかなり上がっており、生活費が高騰しているのに賃金が実質大きく目減りしていることに対する不満であった。

このストライキで、一般の国民にはある程度の不便があったようだが、大きな混乱を招くに至らなかった。保守党は、むしろこのストライキを労働党攻撃の材料に使った。国民の不便を顧みず、自分たちのことだけを考えて行動している労働組合に、労働党が支えられているという批判である。 

なお、イギリスには4つの地域がある。イングランド、スコットランド、ウェールズそして北アイルランドである。労働組合活動もこれらの地域で異なる。例えば、公務員が中心のPCSはこの4つの地域全体で参加したが、労働組合大手のUniteUnisonGMBは今回のストライキに参加したのはスコットランドを除く地域であり、FBUNUTはイングランドとウェールズだけであった。