スコットランド独立の損得勘定の浅はかさ

スコットランド政府は、スコットランドが独立すれば一人当たり千ポンド(173千円)得をするという。ウェストミンスター政府は、イギリスに留まれば1400ポンド(242千円)得をするという。その差は2400ポンドある。どちらが正しいのだろうか?

結論は、どちらともいえないである。

スコットランドが独立すると、その借金の利子が0.5から1%高くなるだろうとする見方がある。もしかすると、短期的にスコットランドは苦しむかもしれないが、長期的にはどうなるかわからない。スコットランド政府のサモンド首席大臣は、もともと石油のエコノミストで、しかも非常に優れた政治家だという評価があるが、独立スコットランドを大きく発展させるかもしれない。その反対に、うまくいかないかもしれない。

それはそうだろう。ウェストミンスターのイギリス政府でも、キャメロン政権は、その政策が正しいのでイギリスは財政削減を成し遂げた上、G7でトップの経済成長を成し遂げていると誇り、もしこれが労働党政権だとイギリスは苦しんでいると主張する。

IMFも少し前まで、イギリスはその財政経済政策を変える必要があると報告していたが、今ではその見解を変えた。

そういう中、スコットランドの弁護士会が独立賛成側も反対側もはっきりしていない点がいくつもあると指摘した。例えば、独立賛成が多数であった場合、スコットランドはEUのメンバーにすぐになれるのか?その場合にはイギリス政府が協力するのかどうか?独立スコットランドの通貨をどうするのか?イギリス政府はじめ主要3党はポンドを共有しないとしているが、スコットランド側は、口先だけだといっている。独立反対が多数であった場合、スコットランドへの権限移譲をさらに進めると主要三党が約束しているが、その内容ははっきりしていない。

確かに、この918日の住民投票の結果次第で賛成側、反対側の両方がその立場を変える可能性がある。

今回の独立住民投票は、かなりのあいまいさを残したまま行われることとなるだろう。とどのつまりは、スコットランドに住んでいる人たちが本当に自分たちのアイデンティティを独立という形で確立したいかどうかということになる。それは目先の損得勘定の問題ではないだろう。

ストライキ制限を求める保守党

保守党は、来年57日に予定されている下院の総選挙のマニフェストでストライキの制限を盛り込むことを発表した。なお、連立を組む自民党は賛成していない。

この基本的な考えは、既にキャメロン首相が明らかにしているが以下のとおりである。 

  1. 組合員の最低投票率を50%とする。つまり、半分以上の組合員が投票し、その過半数が賛成しなければその投票は無効となる。現在は、投票率にかかわらず、過半数が賛成すれば成立する。
  2. 何に投票するかをはっきりとさせ、いつどのような行動を取るかを明記させた上で賛否を問わせる。
  3. 賛成の投票結果が出ても、その効果は3か月のみとする。この7月の公共セクターの大規模ストライキであったように教員組合(NUT)の2012年の投票が今でも有効であるのに歯止めをかけるものである。NUTは過去1年間で3回ストライキを実施した。
  4. 雇用者への告知期間を現在の7日から14日に延ばす。
  5. ピケのルールを強化する。

2013年にストライキで失われた勤労日は443600日で、2012年の2倍近い。しかしながら1970年代の年1300万日や1980年代の年700万日などと比べるとかなり少なくなっている。しかしながら、特に公共セクターのストライキの経済に与える影響はかなり大きなものとなっている。 

もし最低投票率を50%にすれば過去4年間に行われたストライキの3分の2は実施されなかったと見られている。また、それぞれの組合の過激派に組合全体が引きずられるのを防止しようという考えもある。

これらに対して、労働組合会議(TUC)は、既に民主主義国の中では最も強いストライキ法の一つで、これでは労働者の雇用者側との交渉で非常に重要なストライキを実施するのは極めて困難になる。現在の投票は、それぞれの組合員の自宅に投票用紙を郵送しなければならないことになっているが、それを改め、コンピュータやスマホなどでも投票できるように改善すべきだなどと反論した。

保守党は、このストライキ法の強化を総選挙の争点の一つとして取り上げる構えで、特に改正の必要を認めていない労働党との差別化をはかる材料の一つとする考えのようだ。