英国のEUからの離脱を目指して設立された政党英国独立党(UKIP:UK Independence Party)が支持を伸ばしている。政党支持率で伸びているだけではなく、まだ1年半先だが、次期欧州議会議員選挙(2014年5月)への投票動向支持では、キャメロン首相の保守党を上回っている世論調査もある(1月13日発表のComRes/Peopleでは、保守党22%、UKIP23%、労働党35%、自民党8%)。
UKIPの支持が伸びる中、保守党が支持を奪われているようだ。それでは誰がなぜUKIPを支持しているのか?保守党の欧州政策に不満を持つ人たちがUKIPに動いているのだろうか?これを探るため昨年12月、アッシュクロフト卿が世論調査を実施した。アッシュクロフト卿は、かつて保守党の副幹事長も務めた億万長者で、保守党の選挙運動に深くかかわってきた人物である。
まず、誰がUKIPを支持しているのか?調査時点でUKIPに投票すると言った人の2010年の総選挙の投票動向は、保守党45%、UKIP27%、そして自民党が15%であった。つまり、これから見ると、保守党がかなりの支持を失っている。また、年齢別では、65歳を超える人が43%、35歳未満の人はわずか8%。男女別では66%が男性で、女性は34%。つまり、UKIPの支持者には、年配の男性が多いという結果である。
一方、これらの人々は、EUとの関係に不満があるので、UKIPに向かっているという見方が強く、キャメロン首相がこれらの人々の支持を取り戻すカギは、欧州政策だと考えがちだ。しかし、アッシュクロフト卿の世論調査では、UKIPへ投票することを考えている人たちのうち、欧州が最も重要な政策の一つだと言う人は、わずかに4人に1人しかいない(27%)。経済(68%)、移民(52%)そして福祉依存(46%)らの方が欧州問題を上回っている。実は、同様の結果は、YouGovなどの世論調査でも過去に出ている。
しかも、UKIPに投票することを考えている人たちは、UKIPが経済などの重要な問題できちんとした政策を持っているとは考えていない。むしろ、経済政策では保守党が一番だと見ており、キャメロン首相は、首相に最もふさわしく、総選挙では保守党が過半数を占める方がよいと考えている。UKIPは欧州と移民でよい政策を持っていると考えている程度である。
つまり、投票行動を決定するのに政策はそう大きな要素を占めておらず、むしろ移民に対する不満や、主要政党が一般の人々の声を聴こうとしないという印象、さらに現在の英国の様々な問題に対する不満がUKIPへと向かっている姿が浮き彫りになっていると言える。