フランス電力(EDF)を中心とした企業体がサマーセットのヒンクリーポイントに原子力発電所を建設することを英国政府と合意した。
原子炉2基のうち最初のものは2023年に稼働する予定で、費用は160億ポンド(2兆5千億円)と見積もられている。建設には2万5千人の雇用を生み、完成後は900人が勤務することになるという。これらの原子炉の寿命は60年の見込みで、英国の電力の約7%をカバーする見通しである。EDFが来年最終決定し、EUの許可も受ける必要があるが、特に問題があるとは見られていない。
エネルギー大臣は、英国で初めて税金を使わずに建設される原発だと胸を張ったが、そのかわりに消費者が支払うことになる。
原子力発電所の建設は長期間にわたり、しかもエネルギー価格の変動は予想が難しい。そのため、巨額の費用のかかる原子力発電所の建設を進めるために、英国政府は電力会社に価格保証をした。メガワット時92.5ポンド(1万4500円)で、35年間続く。EDFがサフォークのサイズウェルでも原子力発電所の建設をする場合には、費用が節約できることから89.5ポンドに下がるという。
現在の電力の卸売価格は、45ポンド程度(7千円)であることから、この価格保証は卸売価格の2倍となる。保証額を下回ればその差額が消費者から徴収される一方、保証額を上回れば、その差額が消費者に還元されることになる。
他の再生可能エネルギーの価格保証は、BBCによると以下の通りである。
種類 | 保証価格 |
風力(内陸) | 100ポンド |
風力(洋上) | 155ポンド |
潮力 | 305ポンド |
波力 | 305ポンド |
バイオマス | 105ポンド |
太陽 | 125ポンド |
これから見ると、原子力発電所の建設は、そう悪くは見えないが、それでも実際上の「補助金」が年に8億ポンド(1260億円)から10億ポンド(1570億円)となると批判する学者もいる。
英国では、主要三政党のいずれもが原発推進である。古い発電所を止めて電力供給余力が急速に減少しており、必要な電力が供給できなくなる事態も想定される中、低炭素エネルギー化を進めながら、同時にエネルギーの安定的な確保を図るのは、そう簡単ではない。ただし、どのような方法を取ってもかなり高いものにつきそうである。