イギリス独立党(UKIP)は5月の欧州議会議員選挙のイギリス選挙区で、主要3政党、保守党、労働党、自民党を抑えて、得票率並びに獲得議席数でトップとなった。そのため、UKIPが来年5月に行われる予定の総選挙でどの程度の議席を獲得するかに注目が集まっている。
現在、UKIPは下院に議席はない。欧州議会議員選挙は、イギリスを地区に分けて、それぞれの地区から比例代表制で選ばれるが、総選挙は全国の650の選挙区で、トップの得票をした人が一人ずつ選ばれる小選挙区制である。そのため、選挙区支部の強くないUKIPは、これまで、それぞれの選挙区で当選できるような得票ができなかった。ところが、5月の欧州議会議員選挙で示されたように有権者の政府や既成政党に対する不満にはかなり強いものがあり、UKIPへの支持が高まっている選挙区が出てきている。
そういう中、UKIPの党首ナイジェル・ファラージュが、次期総選挙に備えてイングランドの南東部の選挙区のUKIP支部の候補者選考に申し込んでいることがわかった。この選挙区の世論調査でUKIPが高い支持を集めており、この選挙区からファラージュが出馬するのではないかという見通しはこれまでもあり、しかもこの選挙区支部の幹事長(Secretary)がファイナンシャルタイムズ紙に、ファラージュがこの選挙区から出るのは「公の秘密」だと言ったことからその憶測は高まっていた。ファラージュは、インデペンデント紙に投稿してそれを公表した。
ファラージュは、この選挙区サウス・サネット(South Thanet)を含む、イングランド南東地区の欧州議会議員を1999年から継続して務めている。サウス・サネット選挙区には2005年の総選挙で立候補したことがあるが、その際、わずか5%の得票しかできなかった。しかし、上記の世論調査で示されているように、次回総選挙では勝てる可能性があると見られている。
この選挙区は、海岸沿いのワーキングクラスの地域で、有権者が比較的高齢というUKIPの強い典型的な選挙区と言える。前回2010年の総選挙では、保守党が労働党から議席を奪ったが、現職は次の選挙には立たず、次の保守党候補者はUKIPの元副党首が選ばれた。保守党は、UKIP元副党首を立てることでUKIPに向かう票を減らすことを狙ったようだが、相手がファラージュだとその効果には疑いがある。
UKIPは次期総選挙で議席獲得の可能性のある選挙区を中心に25選挙区に全力を傾注する構えだ。また、UKIPの政治資金の献金額がこの2014年の第2四半期に自民党を上回り、着々と次期総選挙の準備を進めている。
これまで総選挙では、有権者はどの政党・党首が政権を担当する可能性があるかで投票を決める傾向が強いとされてきた。しかし、政治不信が強い中、次期総選挙ではそのような傾向がかなり弱まっているようだ。UKIPは2009年の欧州議会議員選挙で保守党に続く議席数を獲得したが、その後世論調査での支持率が大きく下がった。ところが現在は、自民党を上回り、10数%の支持率を維持している。次期総選挙ではUKIPが台風の目となるのは間違いなく、その動向が保守党と労働党の議席に大きな影響を与え、選挙の結果が決まる状況だ。