2014年5月22日(木)に欧州議会議員選挙が行われる。欧州議会は EU 加盟国 28 か国から 5 年ごとに選ばれる 751 議員によって構成されるが、英国にはこのうち 73 議席が割り当てられており、地区別の比例代表で選ばれる。 なお、開票結果は5月25日(日)に発表される。
この選挙で英国独立党(UKIP)がトップとなる勢いであることが、世論調査会社YouGovの世論調査で明らかになった。英国独立党は、英国をEUから離脱させるために1993年に設立された政党で、下院に議席は持たないが、EUとの関係や移民問題などで支持を集めているほか、それら以外の問題の不満も吸収している(この点はアシュクロフト卿の分析や拙稿を参照)。
YouGovの世論調査結果
政党 |
支持率 |
保守党 |
23% |
UKIP |
26% |
労働党 |
32% |
自民党 |
9% |
前回の 2009 年選挙の主要政党の結果は下記のようであった。
政党 |
得票率 |
議席数 |
保守党 |
27.9% |
25(+北アイルランド提携 1 議席) |
UKIP |
16.6% |
13 |
労働党 |
15.8% |
13 |
自民党 |
13.8% |
11 |
2009年年選挙では投票日の1ヶ月ほど前まで、世論調査でのUKIPの支持率は低かったが、マスコミの欧州議会議員選挙の報道が活発化してくるにつれUKIPの支持が大きく伸びた。
UKIPは2013年5月の地方議会議員選挙で大きく伸びたほか、下院の補欠選挙でも大きく票を伸ばした。UKIPの顕在化が今回の世論調査の結果にも現れているが、2009年の例を考えると、UKIPは5月の選挙までにさらに支持を伸ばし、保守党からさらに支持を奪い、労働党を追い越すと見られる。
もしそのような結果が出れば、欧州議会議員選挙は総選挙とは異なるというものの、2015年5月の総選挙を控えた保守党に大きなダメージを与えるだろう。
一方、この世論調査では自民党に壊滅的な結果がでる見込みだ。この世論調査の結果通りであると、自民党は前回獲得した11議席を1議席も獲得できない可能性があるという。この結果を受け、自民党の党首クレッグ副首相は、この世論調査の正確さに疑問を呈しながらも「苦しい戦い」だとコメントしている。
なお、英国の有権者は、総選挙とそれ以外の選挙では投票態度を変える傾向がある。この欧州議会議員選挙は、その典型ともいえる。総選挙は、英国のリーダーそして政権を決める選挙であるが、欧州議会議員選挙では政権政党に対する批判や不満が強く出、批判政党に票が動く傾向がある。
英国の一般の政党支持世論調査では、もし明日総選挙があればどの政党に投票するかという形の質問をするため、このような政党支持の指標で欧州議会議員選挙の行方をはかることは困難である。そのため日常的な政党支持率は必ずしも参考にならない。