1993年に英国を欧州連合(EU)から離脱させることを目的に設立された英国独立党(UKIP)が多くの支持を集めている。5月22日(木曜)投票の欧州議会議員選挙では、英国の主要政党保守党、労働党、自民党を尻目にトップの議席を獲得する勢いである。UKIPに支持が集まっているのは、単にEUとの関係をめぐる問題だけではなく、政府への不満や既成政党への批判のあらわれである。
5月7日に発表された「英国選挙研究」(The British Election Study)の報告書によると、ちょうど1年後の2015年5月7日に行われる予定の下院議員選挙でもUKIPがかなり健闘する可能性があることがわかった(参照BBCの記事)。
欧州議会議員選挙は5年ごとに行われる。この選挙では、下院議員を選出する総選挙で使われている完全小選挙区制(一つの選挙区から最高投票の一人が選ばれる)とは異なり、比例代表制が実施されている。そのため、下院に議席を持たないUKIPもこれまで議席を獲得してきた。
2009年欧州議会選獲得議席数
政党 | 議席 |
保守党 | 25 |
UKIP | 13 |
労働党 | 13 |
自民党 | 11 |
その他 | 8 |
UKIPは前回の2009年欧州議会議員選挙では、保守党に続き、第2位の13議席を獲得したが、その翌年の2010年の総選挙では3.1%の得票にとどまった。英国の有権者は、総選挙で勝つ見込みのある政党に投票する傾向がある。ところが、「英国政治研究」によると、UKIPの次期総選挙での得票率は11%に上る見込みという。
「英国政治研究」は、1964年から50年にわたり研究を継続しているが、2009年欧州議会議員選挙でUKIPに投票するとした人で、その翌年の2010年総選挙でもUKIPに投票するとした人が25%であったのに対し、今回の調査(2万人余に対してオンラインで2014年2月と3月に実施)によると、来年5月の総選挙でもUKIPに投票するとした人は60%近くに上るという。
つまり、UKIPは2009年と比べて、かなり大きな支持を集めている上に、欧州議会議員選の支持の総選挙への定着率が大幅にアップするというのである。
もちろん総選挙の場合は完全小選挙区制であるため、11%程度の得票では議席は獲得できない。しかしながら、票は全国にまんべんなく分散しているわけではなく、かなり偏在しているために、UKIPが下院の議席を獲得する可能性はゼロではない。特に補欠選挙では政権批判・既成政党批判がかなり強く出る傾向があり、UKIPはこれまで行われた補欠選挙で次点の得票を重ねてきた。そのため、今後の補欠選挙で議席を獲得する可能性がある。
ただし、最も注目されるのは、UKIPの支持票がキャメロン首相の保守党に与える影響である。「英国政治研究」では他の世論調査でも指摘されていたことを改めて確認している。
2015年の総選挙でUKIPに投票するつもりの人たちが、2010年総選挙でどの政党に投票したかは以下のとおりである。
政党 | % |
保守党 | 44% |
自民党 | 17% |
労働党 | 11% |
つまり保守党が最も大きな影響を受ける。UKIPへの支持動向が次期総選挙の結果を決めるといえる。