ロンドン市長のボリス・ジョンソンが来年の総選挙に立候補したい意思を表明した。ジョンソンは、労働党の強いロンドンで2008年には現職のケン・リビングストン、そして2012年にもリビングストンを2回続けて破った、人気のある保守党政治家である。私立有名校のイートンそしてオックスフォード大学で古典を学んだ人物であるが、誰ともでも気さくに話し、当意即妙のユーモアのある話で人を惹きつける人物である。
保守党の党大会では、人気のあるジョンソンの話にジャーナリストが引っ張られることを防ぐために、キャメロン首相とオズボーン財相とは異なる日に時間を限ってジョンソンを登場させるほどで、その「集客力」には大きなものがある。
ジョンソンは2012年の市長選で、2016年までの市長任期を全うし、他の選挙には出ないと約束していた。そのため、この時点での立候補にはもちろん批判があるだろう。しかし、多くは、ジョンソンの立候補を半ば予測していた。ジョンソンには、保守党党首、そして首相となる野心があり、次期党首選に備えるのではないかと見ていたからだ。
ジョンソンはこれまで多くの問題を起こしてきた。女性問題を否定したが、それが本当であることがわかり、保守党のマイケル・ハワード党首から影の内閣のポストを首になったこともある。これまでの多くの不行跡をBBCの番組で詰問されてその政治生命が危ういと思われたこともあるが、ジョンソンはこれらを乗り越えてきた。それを考えると、この「小さな約束違反」がスキャンダルに打たれ強いジョンソンの政治家としての命運に影響するとは考えにくい。
なお、前市長のリビングストンは、労働党の下院議員時代の2000年に市長に当選したが、2001年の総選挙まで下院議員とロンドン市長の二つを兼職した。ジョンソンは、過去に2期下院議員を務めたことがある。来年下院議員に復帰すれば、1年間二つの職を兼職することになる。キャメロン首相は次期総選挙で保守党の得票を高めるためにジョンソンの下院議員復帰を求めたいきさつがあるだけに、保守党が次期総選挙で勝っても、ジョンソンの兼職には協力するだろう。
ただし、多くの人の焦点は、来年の総選挙で保守党が敗れたときのことである。その際にはキャメロンが党首を退き、新党首が選出されることとなる可能性が強い。ジョンソンが下院議員となっていれば、党首選に出馬できるが、下院議員でなければ、そのチャンスを逃しかねない。それでも、もしジョンソンが党首となれば、その時にはロンドン市長を継続することは難しいだろうと思われる。
なお、イギリス名物といってもよい賭け屋の賭け率を見ておこう。大手のウィリアム・ヒルの次期保守党党首の賭け率は以下のとおりで、ジョンソンがリードしている。
ボリス・ジョンソン(ロンドン市長) 5-2
テリーザ・メイ(内相) 4-1
ジョージ・オズボーン(財相) 10-1
マイケル・ゴブ(院内幹事長) 12-1