依然戦略の定まらないメイ首相

イギリスのEU大使が突然そのポストを辞任し、しかも国家公務員も辞職した。Brexit交渉が4月から始まる見通しであり、この経験豊富な人物をこの段階で失うのは大きな損失だが、その辞任の背景には、メイ政権のこのEU大使への態度と、Brexit戦略が定まらないことがあった。

メイ首相がBrexit戦略をまだ決めていないことは、明らかである。スコットランドのスタージョン首席大臣が、メイ首相の言うことは6か月前と変わっていないように感じると指摘しているが、1月8日のメイ首相のテレビのインタビューでも、ほとんど明確になっていない。

これまでもBrexitとはBrexitと主張してきたが、このインタビューで、イギリスはEUのメンバーでなくなり、EUに何らかの形で部分的に残留する可能性を否定した。移民のコントロールを最優先するかとの問い、すなわちこれをEUの単一市場に残ることよりも優先するかとの質問には答えず、いつもの、イギリスにベストの交渉結果を得るとの答えである。

これは、雑誌エコノミストが指摘したメイ首相の優柔不断さに関係しているように思われる。この傾向はこれまでにも拙稿で指摘したように内相時代にもあった。このような状態がいつまで続けられるか注目される。