次の下院総選挙は、2015年5月の予定だ。その総選挙では、現在の定数650が600に減り、選挙区の有権者数の差が、特定の選挙区を除き、5%の上下の幅に抑えられることとなっている。当初、この変更で有利となるのは保守党で、不利になるのは労働党、そして自由民主党は不利にも有利にもならないと見られていた。そのため、この法案の審議過程で、労働党はこの変更は、選挙区の線引きを政権政党が自党に有利に変えるゲリマンダーだと言って非難した。そして上院で労働党議員によるフィルバスターが起きたほどだった。しかし、最近の研究によると、保守党には思ったほど有利にはならず、労働党にはそれほど大きく不利にはならないが、自由民主党への影響は非常に大きいことが明らかになった。
この研究は、リバプール大学の『民主的監査』(Democratic Audit)が行ったものである。結果は、
http://filestore.democraticaudit.com/file/5618fc68c4694271e17e44762ef93e19-1307458033/summary-boundary-changes—all-countries-and-regions-v2.pdf
これによると、650から600議席へと50議席減る中で、主要政党の議席数の変更は、保守党マイナス15、労働党マイナス18、そして自由民主党マイナス14である。2010年総選挙の獲得議席数は、保守党307、労働党258、そして自民党57であり、各政党の減少割合は、保守党5.9%、労働党7%、そして自民党は、24.6%である。つまり、新しい区割りが実施されると、自民党は選挙の前から既に4分の1の議席を失っていることになるのである。(参考http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-13665221 なお、この記事は、6月6日付であるが、民主的監査は6月7日に結果を修正しているために、数字に若干の違いがある。)
若干の背景説明が必要だろうと思われる。まず、新選挙区区割りは、2013年秋までに確定されることになっており、それは、2010年12月の有権者名簿に基づいて行われる。また、選挙区区割り委員会(イングランド、スコットランド、ウェールズそして北アイルランドの4つの区割り委員会)は、既に多くの区割り方針を発表しており、各地方で減らす議席数を発表している。例えば、ウェールズで何議席減り、ロンドンで何議席減るといった具合だ。今後、具体的な選挙区区割り案が発表され、ヒアリングが行われ、最終的に確定するという順序を経る。民主的監査は、今回の発表は、予想ではないと言うが、そのメソロドジーなどから、結果にそう大きな差は出ないものと思われる。
なぜ、今回の区割りの変更が自民党に不利になるかだが、これは、自民党が議席を獲得している地域がいくつかの拠点に集中しており、隣接の選挙区からその議員が出ているところが多く、そのために区割りの影響を直接受けるためである。自民党にとっては、下院選挙制度変更の国民投票の否決、連立政権参加後の大幅な支持率の低下と相まって、更なる大きな打撃である。