世界の多くの人々がユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)に注目している。その中、フィンランドでパイロットが行われているが、それがうまくいっていないようだ。
ベーシックインカムとは、最低所得保障制度で、国民が何の条件もなしに国からの現金給付を受けるものである。来るロボット化、AI化で多くの人々が仕事を失う可能性がある中、人々の生活を守る手段として考えられたり、貧困者をなくしたりするなどの効果があるとの主張もある。また、このような制度があるとパートタイムの仕事に就きやすい、一つの仕事から次の仕事に移る間の期間にも一定の収入を与えられ、仕事を移りやすくするとの効果もあるなどと主張される他、一律に支給することで、福祉手当システム全体の運営コストを下げる効果もあるという主張もある。イギリスでも緑の党が政策として掲げ、日本でも希望の党などがこの政策を訴えている。スコットランドでもこのパイロット事業に取り組む動きがある。
しかし、この制度を進めるのはそう簡単なことではない。フィンランドの実験は世界的な注目を浴びている。この実験は、25歳から58歳までの失業者2千人に毎月、無税の560ユーロ(7万4千円)を支給するものである。当初の案は、800ユーロ(10万6千円)だったが、全国に導入されることとなれば、国の歳出額を上回るとして、減額されたと言われる。このパイロットは、2017年1月から始まり、2年間のものだが、既に2018年末に終了することが決まったという。このパイロットの主催者は、その後さらに拡張したパイロット案を持っていたと言われるが、それを政府が認めなかったと言われる。
このパイロットでは、人々の勤労意欲は増えていないようだ。中には給付だけ受けて、家でコンピュータゲームをしているという例もあると言われる。フィンランドの政権政党は右だが、他の北欧国と比べて就業率が低いため、その改善を図る手段を考えていたようだ。さらなる実験を行わないのには、2019年には選挙が控えているからだという見方がある。
このベーシックインカムの問題は、このような制度を設けるためのコストだ。OECDの報告では、所得税を30%上げる必要があるとされており、このような制度が正当化できるかという疑問がある。
もちろん社会全体としてコストと便益がつり合い、そのような制度が正当化できる状況が生まれれば別だが、それまでは実現する可能性は乏しいように思われる。